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自殺や孤独死が​あった時の<告知事項>とは?

公開日: 2017年11月27日

先日の神奈川県座間市での事件。

世間ではもちろん大きなニュースですが、
大家さんにとっても衝撃の大きい事件でした。

「自分の物件であのような事件が
起きてしまったらどうしよう・・・」

と思った方も多いのではないでしょうか?

今回は、アパマンや戸建賃貸などの
賃貸物件で孤独死や自殺があった時の
<告知事項>について解説します。

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◆「孤独死」の場合
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孤独死の場合には基本的に、

「告知すべき義務はない」

と考えられています。

なぜなら、

「人間の生活の本拠である以上、
老衰や病気等による自然死は、
当然想定できるため」

だからです。

しかし、入居希望者が心理的に
嫌悪感を抱く場合もあります。

例えば発見が遅れて腐敗してしまった場合、
病死があったことを告知すべき義務が
発生するケースもあると考えられています。

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◆「自殺」の場合
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自殺の場合は、

「告知しなければならない」

と考えられています。

誰でも、自殺のあった部屋には入居したくない
と思うのは当然ですよね。

しかし、告知期間については、
「何年間」や「入居者が何人入れ替わるまで」
といった明確な決まりはありません。

告知期間というのは、その案件ごとに
被害状況や立地、物件の性質などを考慮して
定められると考えられているからです。

これではもし万が一、自殺があった場合に
どのくらいの期間、告知するべきかわかりませんね。

そこで、過去の判例を参考にしてみましょう。

東京地裁平成13年11月29日判決では、

「貸室に付いての心理的瑕疵は、
年月の経過と共に希釈される事が明らかであり、
本件貸室が大都市内に所在する単身用の
アパートの一室で有る事を斟酌すると、
本件事故が有った事は2年程度経過すると、
瑕疵とする事ができなくなるものと見るのが相当である。」

と、

「2年を経過すれば告知義務はなくなる」

という判決が出ています。

このことから、大都市部の単身アパートでは、
告知期間は2年間と考えられるでしょう。

しかし、訴えられるリスクを考慮して、

・ 4〜6年
・ 2〜3人

の入れ替わりがあるまでは告知するケースが
多いのが現状です。

人によって嫌悪感の感じ方は違うので、
とても難しい問題ですね。

上記のことからも自分の物件で自殺が
発生すれば、最低でも2年間は
告知しなければならず、賃貸経営が
苦しくなることは間違いありません。

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◆「事故物件」となってしまうのを防ぐには?
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実際、入居前の審査で判断するのは、
相当難しいと思います。

なぜなら、審査では人の本心までは
見破れないからです。

ただ、今回の座間市の事件では「事故物件」
となってしまう前に防げた可能性があったと思います。

それは、申込み時に

「今すぐに入居したい」

という要望があったからです。

経験上、「今すぐに入居したい」という方は

・滞納等のトラブルを抱えている
・何か急遽引っ越さなくてはならない
 緊急的なトラブルがあった

などの可能性が高いです。

引っ越しするのには、必ずなにかしら理由があります。

例えば、「更新の時期」や
「現住居に不満を抱えている」などです。

入居希望者に少しでも不安を感じた場合は、
引っ越し理由が明確ではない限り、
入居を受け入れないというルールを
あらかじめ決めておくと良いでしょう。

今後は、引っ越し理由が単に「住み替え」
と言われた場合でも、さらに明確な理由まで
聞く必要があると再認識させられる事件でした。

鹿股 恭平