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コーヒー1杯700円のルノアールはなぜ潰れないのか?
公開日: 2023年10月21日
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こんにちは!YouTuber ウラケン不動産です。
今日は、コーヒー1杯700円のルノアールはなぜ潰れないのか?というテーマでお話ししたいと思います。
昔流行った、「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」の喫茶店版です。
世の中には、オワコンと思われているビジネスが実は儲かっている・・・ということがありますよね。
今、僕が気になっているのは喫茶店の「ルノアール」で、銀座ルノアールという会社名で上場している優良企業です。
ルノアールは、高級喫茶店の代名詞として知られており、銀座の一等地にはじまり、都内の主要駅の駅前で、単価700円前後のコーヒーとちょっとした軽食を提供しています。
しかし、ルノアールの店内は結構ガラガラなんですよね。
僕も個人的に好きで、時折訪れることはありますが、昔ほど頻繁には足を運ばなくなりました。
店内は余裕を持って席が配置されていて、相当高額な賃料を支払っているはずなのに、コーヒーと軽食を食べても、客単価は1500円前後だと思います。
スタバの回転率と比べてみても、ルノアールの回転率は全然良くありませんし、コメダ珈琲やドトールと比べても、たぶん売り上げは少ないと思います。
このような状態で、なぜルノアールは潰れないのか、不思議に思っています。
そもそも、飲食業において、どこに出店するかは提供する商品以上に重要な要素であり、出店戦略がその会社の運命を左右すると言ってもいいでしょう。
ルノアールは立地的には申し分がありませんが、全体的に儲かっているようには見えません。
立ち退き料という意外な戦略
しかし、実はルノアールには意外な戦略があると言われています。
それは、めちゃくちゃ古いビルに出店するという戦略です。
つまり、築年数が古く、将来的に取り壊されそうな物件に出店すれば、将来立ち退き料がもらえる可能性がある・・・ということなのです。
もちろん、これは憶測であり確証は全くありません。
しかし、僕が知る限りでも、ルノアールの入っているビルは、めちゃくちゃ古いビルばかりです。
そして、実際に立ち退き料をもらっているかどうかは、ルノアールの決算資料を見ることで確認できます。
決算書では、「立ち退き料」ではなく「受取補償金」という勘定科目で記載されていて、そこから情報を得ることができます。
具体的にいくらもらっていたかというと、
平成23年:4億円
平成24年:0円
平成25年:2,200万円
平成26年:0円
平成27年:2億3,000万円
平成28年:1億9,500万円
平成29年:9,100万円
平成30年:2億円
平成31年:0円
令和元年:7,400万円
令和2年:1億1,800万円
令和3年:2,000万円
令和4年:0円
令和5年:中間決算の時点で4,700万円
この14年間で合計13億7,700万円の立ち退き料を受け取っていて、平均すると毎年1億円近くを得ていることになります。
この中で最も大きな立ち退き料は、平成23年の4億円で、これは銀座のマロニエ通りにあった店舗の立ち退き料だったと言われています。
ルノアールは上場企業なので、さすがに立ち退き料を収益の柱にしていることはないでしょう。
しかし、出店時に「将来、立ち退きを求められた場合に、どれくらいの立ち退き料が得られそうか?」は、絶対に確認していると思います。
なぜなら、このような店舗展開をしている会社には、不動産のプロがいるからです。
オーナーの立場に立った時、ルノアールから学べる事
さて、今日お伝えしたいのは、ルノアールが潰れない理由は立ち退き料である、とかそういうことではありません。
不動産コンサルタントの立場から、立ち退き料というのはどうやって決まるのか?あなたがオーナーの立場だったとして、立ち退き料をせびられないためにはどうすればいいのか?についてお話ししようと思います。
立ち退き料はどうやって決まるのか?
まず、立ち退き料の決まり方ですが、過去の東京高裁の判例が参考になります。
立ち退き料を決める際は、契約の時期、内容、テナントが建物をどのように利用していたのか、オーナーがどのような事情で解約申し入れをしたのか、双方の事情にはどんなものがあるか?ということを勘案して、裁判所の裁量に委ねられます。
テナント側の事情で言えば、契約期間、その店にいくら設備投資をしたのか、お客様との関係、売上、移転するためのコスト、移転先の営業補償などなど、あらゆることを考慮して決められるので、その場所で根を張ってがっつりと商売をしていた場合、立ち退き料は非常に高くなります。
それが都心の一等地であればなおさらです。
立ち退き料をせびられないためにはどうすればいいのか?
では、オーナーは絶対に立ち退き料を払わなければいけないのでしょうか?
結論としては、テナントとの契約が「普通借家契約」であれば、立ち退き料を払わないと立ち退かせることはできません。
なぜなら、普通借家契約はテナントが更新を希望する限り、オーナーは継続して貸し続けなければならないという法律になっているからです。
だからこそ、僕は日ごろから「定期借家契約で契約するのが望ましい」と口を酸っぱくして言っているのです。
定期借家契約には更新という概念が存在しないので、契約期間の満了と同時に必ず契約は解除されます。だから、定期借家契約であればそもそも立ち退き料も発生しません。
店舗で定期借家契約が厳しい場合
ただ、例えば3年で期間が切れるような定期借家契約では、お店を借りてくれる人はいないでしょう。
ですので、僕は再契約型の定期借家契約を勧めています。
しかし、店舗の場合は設備投資の費用も相当かかるため、たとえ再契約型の定期借家契約であっても、なかなかテナントは決まりにくいかもしれません。
そのような場合は、普通借家契約もやむなしとなりますが、もし将来的に建て替える予定があるのであれば、特約に「立ち退き料を請求しない」という文言を盛り込んでおくことは非常に重要だと思います。
ただし、普通借家契約ではこの特約を盛り込んだとしても、「借主不利」というような判決が出て、認められないかもしれません。しかし、一定の効果は期待できるかもしれません。
あなたも店舗を含む古い物件を投資対象とする場合は、将来の建て替え時には「営業補償」という問題があることを念頭に、契約を結んだり、買付価格を決定したりすることをお勧めします。
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こんにちは!YouTuber ウラケン不動産です。
今日は、コーヒー1杯700円のルノアールはなぜ潰れないのか?というテーマでお話ししたいと思います。
昔流行った、「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」の喫茶店版です。
世の中には、オワコンと思われているビジネスが実は儲かっている・・・ということがありますよね。
今、僕が気になっているのは喫茶店の「ルノアール」で、銀座ルノアールという会社名で上場している優良企業です。
ルノアールは、高級喫茶店の代名詞として知られており、銀座の一等地にはじまり、都内の主要駅の駅前で、単価700円前後のコーヒーとちょっとした軽食を提供しています。
しかし、ルノアールの店内は結構ガラガラなんですよね。
僕も個人的に好きで、時折訪れることはありますが、昔ほど頻繁には足を運ばなくなりました。
店内は余裕を持って席が配置されていて、相当高額な賃料を支払っているはずなのに、コーヒーと軽食を食べても、客単価は1500円前後だと思います。
スタバの回転率と比べてみても、ルノアールの回転率は全然良くありませんし、コメダ珈琲やドトールと比べても、たぶん売り上げは少ないと思います。
このような状態で、なぜルノアールは潰れないのか、不思議に思っています。
そもそも、飲食業において、どこに出店するかは提供する商品以上に重要な要素であり、出店戦略がその会社の運命を左右すると言ってもいいでしょう。
ルノアールは立地的には申し分がありませんが、全体的に儲かっているようには見えません。
立ち退き料という意外な戦略
しかし、実はルノアールには意外な戦略があると言われています。それは、めちゃくちゃ古いビルに出店するという戦略です。
つまり、築年数が古く、将来的に取り壊されそうな物件に出店すれば、将来立ち退き料がもらえる可能性がある・・・ということなのです。
もちろん、これは憶測であり確証は全くありません。
しかし、僕が知る限りでも、ルノアールの入っているビルは、めちゃくちゃ古いビルばかりです。
そして、実際に立ち退き料をもらっているかどうかは、ルノアールの決算資料を見ることで確認できます。
決算書では、「立ち退き料」ではなく「受取補償金」という勘定科目で記載されていて、そこから情報を得ることができます。
具体的にいくらもらっていたかというと、
平成23年:4億円
平成24年:0円
平成25年:2,200万円
平成26年:0円
平成27年:2億3,000万円
平成28年:1億9,500万円
平成29年:9,100万円
平成30年:2億円
平成31年:0円
令和元年:7,400万円
令和2年:1億1,800万円
令和3年:2,000万円
令和4年:0円
令和5年:中間決算の時点で4,700万円
この14年間で合計13億7,700万円の立ち退き料を受け取っていて、平均すると毎年1億円近くを得ていることになります。
この中で最も大きな立ち退き料は、平成23年の4億円で、これは銀座のマロニエ通りにあった店舗の立ち退き料だったと言われています。
ルノアールは上場企業なので、さすがに立ち退き料を収益の柱にしていることはないでしょう。
しかし、出店時に「将来、立ち退きを求められた場合に、どれくらいの立ち退き料が得られそうか?」は、絶対に確認していると思います。
なぜなら、このような店舗展開をしている会社には、不動産のプロがいるからです。
オーナーの立場に立った時、ルノアールから学べる事
さて、今日お伝えしたいのは、ルノアールが潰れない理由は立ち退き料である、とかそういうことではありません。不動産コンサルタントの立場から、立ち退き料というのはどうやって決まるのか?あなたがオーナーの立場だったとして、立ち退き料をせびられないためにはどうすればいいのか?についてお話ししようと思います。
立ち退き料はどうやって決まるのか?
まず、立ち退き料の決まり方ですが、過去の東京高裁の判例が参考になります。
立ち退き料を決める際は、契約の時期、内容、テナントが建物をどのように利用していたのか、オーナーがどのような事情で解約申し入れをしたのか、双方の事情にはどんなものがあるか?ということを勘案して、裁判所の裁量に委ねられます。
テナント側の事情で言えば、契約期間、その店にいくら設備投資をしたのか、お客様との関係、売上、移転するためのコスト、移転先の営業補償などなど、あらゆることを考慮して決められるので、その場所で根を張ってがっつりと商売をしていた場合、立ち退き料は非常に高くなります。
それが都心の一等地であればなおさらです。
立ち退き料をせびられないためにはどうすればいいのか?
では、オーナーは絶対に立ち退き料を払わなければいけないのでしょうか?
結論としては、テナントとの契約が「普通借家契約」であれば、立ち退き料を払わないと立ち退かせることはできません。
なぜなら、普通借家契約はテナントが更新を希望する限り、オーナーは継続して貸し続けなければならないという法律になっているからです。
だからこそ、僕は日ごろから「定期借家契約で契約するのが望ましい」と口を酸っぱくして言っているのです。
定期借家契約には更新という概念が存在しないので、契約期間の満了と同時に必ず契約は解除されます。だから、定期借家契約であればそもそも立ち退き料も発生しません。
店舗で定期借家契約が厳しい場合
ただ、例えば3年で期間が切れるような定期借家契約では、お店を借りてくれる人はいないでしょう。ですので、僕は再契約型の定期借家契約を勧めています。
しかし、店舗の場合は設備投資の費用も相当かかるため、たとえ再契約型の定期借家契約であっても、なかなかテナントは決まりにくいかもしれません。
そのような場合は、普通借家契約もやむなしとなりますが、もし将来的に建て替える予定があるのであれば、特約に「立ち退き料を請求しない」という文言を盛り込んでおくことは非常に重要だと思います。
ただし、普通借家契約ではこの特約を盛り込んだとしても、「借主不利」というような判決が出て、認められないかもしれません。しかし、一定の効果は期待できるかもしれません。
あなたも店舗を含む古い物件を投資対象とする場合は、将来の建て替え時には「営業補償」という問題があることを念頭に、契約を結んだり、買付価格を決定したりすることをお勧めします。
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