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「選ばれる大家さん」になる奥義、マーケティング3.0とは?

公開日: 2017年06月24日

不動産投資にもマーケティングが大切

あなたはマーケティングの本質を知っていますか?

あらゆるビジネスはマーティングをベースにして成り立っています。今後市場に何が求められるのか? 市場を調査し、時には求められるものを感じとって、商品やサービスを提供していく・・・これがマーケティングです。

当然ですが、不動産投資にとってもマーケティングは重要です。入居者の動向、法律や税制改正、政治的な動きも読みながら、物件選びや、投資の判断を行なうことになりますからね。

最近読んだ本『コトラーのマーケティング3.0』(朝日新聞出版)では、今世の中で起こっている「企業」が提供するものと「消費者」が求めるもののズレや違和感を明確に説明しています。

この本は我々、不動産投資家にとっても大変参考になります。そこで、コトラーの言葉を引用しつつ、これからの投資マーケティングについてに考えてみたいと思います。

マーケティング1.0の時代とは?

マーケティング1.0の時代とは、製品中心のマーケティング、すなわち製品中心の段階。いわゆる1940年代から1990年あたりまでがその時代です。無いものを作り、その商品によってより便利な生活が実現すると消費者が想像できれば売れた時代です。

たとえば、この時代に活躍した人は、ホンダの本田宗一郎、松下電機の松下幸之助、ソニーの井深大などがあげられます。冷蔵庫、テレビ、洗濯機は、当時、三種の神器といわれていました。また、モータリゼーションも急速に進みました。彼らの活躍によって、私たちの暮らしは一気によくなっていったわけですね。

もちろん住宅業界も例外ではありません。

戦後間もない日本は、超住宅難の時代でしたから「家」は作りさえすれば売れた時代です。国も住宅金融公庫をつくり、融資の予算を拡充し、低利なローンをバンバン貸し付けました。その結果、国民全体が持家取得へと向かっていったのです。

一方、アパートなども建てればすぐに満室になる、そんな時代でした。とにかく住宅は供給ありきで、性能や機能は二の次。それでも、住宅は資産(財産)であると誰もが信じて疑わなかった時代です。

マーケティング2.0の時代とは?

マーケティング2.0の時代とは、消費者志向のマーケティングが重要視された時代です。今日の情報化時代、すなわち情報技術がコアテクノロジーになった時代に登場したマーケティングです。この時代、消費者はすでに十分な情報を持っていたため、類似の製品を簡単に比較することができました。

マーケティング2.0で頭角を現した人物として代表的なのは、ソフトバンクの孫さん、楽天の三木谷さん、そしてホリエモンあたりでしょう。

この時代は、消費者のマインドとハートをつかむために消費者をセグメント化し、ニーズを分析し、他社より優れた製品開発、サービスをしなければなりませんでした。

不動産業界でいうと、単にアパートを作るだけでなく、一括借り上げ保証システムなどで、その先の安心を提供しないと大家さんから選ばれない時代でした。

さらに、消費者となる入居者は、アットホームやホームズなどで簡単に賃貸物件を比較することができましたので、大家さんはデザインや機能性にすぐれた物件をつくり、差別化を図る必要が出てきたわけです。

マーケティング3.0の時代とは?

そして、今はマーケティング3.0の時代に突入しています。

マーケティング3.0では、「マーケターは人びとを単に消費者とみなすのではなく、マインドとハートと精神を持つ全人的存在ととらえて彼らを働きかける必要がある」とコトラーはいいます。

さらに、「消費者は混乱に満ちた世界において、自分たちの一番深いところにある社会的、敬愛的、環境的な公正さに対する欲求に、ミッションやビジョンや価値で対応しようとしている企業を探している。選択する製品やサービスに、機能的、感情的充足だけでなく精神の充足をも求めている」といっています。

この言葉はとても腑に落ちます。コトラーの言葉を私流に解釈すれば、マーケティング3.0では、単にモノやサービスを提供するのではなく、自分たちがその商品を買うことによって「いかに社会とつながっているのか?」を意識している消費者が多いということでしょう。

たとえば、居酒屋であればある大手チェーン店を利用すれば、自分たちの飲み代の一部がカンボジアの学校づくりに活かされます。経済的にリーズナブルな居酒屋はたくさんありますが、マーケティング3.0の時代は単に安いだけでは長続きしません。

これからのビジネスは、単に良い商品やサービスというだけでなく、たとえ間接的であっても、社会的なつながりや精神的な充足が得られることが消費者から選ばれる要因になっていくということなのです。

そして、このような社会的ミッション(使命)を掲げる企業に自然とお客様が集まるようになる、すでにそんな時代になっているわけです。ランドセルを施設に寄付した「タイガーマスク」運動のように、ほんわかした話題に世の中が敏感に反応するのもそういった時代背景があるのかもしれません。

振り返って、不動産業はどうでしょうか? 私は全く同じだと思います。

今までは入居者として嫌われていた、高齢者や外国人を積極的に受け入れるとか、近い将来は障害者も入居者として当たり前に受け入れられるような活動を今から行っている大家さんが選ばれる時代になると思えてなりません。

たとえば、生活保護が受けられるからといって、本当に怠けた人を受け入れるのではなく、その人を本当に社会復帰させるよう、何かしらのお手伝いができる大家さんの物件に入居者は集まるようになっていくはずです。

ですから、大家といえども、この商売を通じて自分はどう社会とかかわっていくのか、というミッションを大きく掲げる時代になったと思うのです。これからの大家業は、単に部屋を貸す商売から、「住」という社会的な基盤を支えているという強い意識が重要です。

これから先の需給関係だけを見れば大家業は決して明るくありません。そんな中でも勝ち続けていく大家さんは、利己主義を超越した利他の精神で大家業に取り組めるかどうかがカギになると思うのです。