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「格安賃貸」の脅威〜レオパレス21救済ファンドの野望で全国の大家さんが窮地に!?

公開日: 2020年10月30日

先日、倒産の危機が叫ばれていたレオパレス21に救世主が現れました。それは、米投資会社のフォートレス・インベストメントです。

この投資ファンドが計572億円をレオパレス21に支援すると発表したことで、同社の株価が急騰しています。

しかし、レオパレス21の救世主であるフォートレス・インベストメントが不動産投資家の脅威になる恐れがでてきました。

というのも、この投資ファンドは低所得者向けの格安賃貸、「ビレッジハウス」を全国で10万戸も運営している日本最大級の大家さんだからです。

もし今後、レオパレス21がこの投資ファンドに吸収されるとすれば、合計60万戸以上の格安賃貸が世の中に供給されるわけですから、大家さんの脅威となることは間違いないでしょう。

そこで今回は、この投資ファンドの正体や格安賃貸のビレッジハウスについて詳しく解説します。

さらに、今後レオパレス21がどのように一般の不動産投資家の脅威になるのか、そしてその対策についても具体的に解説していきますので、ぜひ最後までご覧ください(以下、レオパレスと表記)。

レオパレス救世主のしたたかな策略

今回、レオパレスの救済に名乗りを挙げたのは、米投資会社のフォートレス・インベストメントです。

同社は、2020年3月期に赤字転落して話題になったソフトバンクグループが2017年に買収した会社です。

日本では2016年に、政府からの払い下げ入札で「雇用促進住宅」を10万戸取得し、現在は「低価格賃貸」がコンセプトのビレッジハウスというブランドを全国展開しています。

このフォートレスが、レオパレスの四半期決算において約600億円の支援を発表したことにより、どん底だったレオパレスの株価が翌日暴騰しました。

これはなかなかしたたかな作戦だな・・・と思ったのは私だけではないはずです。

レオパレスはもともと8月に予定していた20年4~6月期の決算発表が、早期退職者が大量に発生したという影響でまとめられず、9月11日に延期となっていました。

しかし、決算資料の度重なる遅延で、またもや9月30日に再延期。

さらに、決算発表が「大幅な赤字」「債務超過が100億円になる」と報道されたことで、レオパレスの株価は大暴落していました。

しかしこれは、フォートレスの策略だったと思えてなりません

決算発表の遅れに乗じて、「100億円の債務超過になった」「自己資本比率が0.7%になった」といったネガティブな情報を事前に発表させ、「レオパレスはもう潰れるのではなないか?」というイメージを持たせておき、レオパレスの株価が下落しきったところでフォートレスが株を取得する・・・という狙いがあったのではないかと思います。

その証拠に、決算発表翌日のレオパレスの株価は大暴騰しました。

投資ファンドが展開する「ビレッジハウス」とは

フォートレスが展開する「ビレッジハウス」は、厚生労働省の管轄で運営されていた「雇用促進住宅」という公団住宅が元になっています。

「雇用促進住宅」とは、求職者の就職が決定してから次の住居が決まるまで、極めて低い家賃で貸し出された住宅のことです。

入居手続きは職業安定所で行われ、入居期間は基本的に2年間でした。

この「雇用促進住宅」は1960年代から供給が始まりましたが、2000年台に入って入居率が低下&老朽化による修繕費が膨大になってきたため、事業の廃止が決定され、一括売却されたという経緯があります。

その一括売却を落札したのが、ソフトバンク傘下の米フォートレス・インベストメントです。

同社は、2016年から17年にかけ、2909棟を614億で落札しました。総戸数は約10万戸ということから、1戸あたりわずか60万円程度で取得したことになります。

リフォーム代を加味しても、1戸あたり100万円程度で入手できたのではないかと思います。

その後、雇用促進住宅は低価格賃貸をコンセプトとする「ビレッジハウス」というブランドへとリブランドされ、10万戸という巨大な規模で運営が開始されました。

気になる「ビレッジハウス」の賃貸条件

この「ビレッジハウス」、元は昭和の公営住宅ですから、いわゆる公団タイプの2DKや3DKが主流です。

貸し出し家賃は2万円台からと格安で、敷金ゼロ、礼金ゼロ、手数料ゼロ、更新料ゼロ

さらに、同社のサイトから申し込むと仲介手数料もかかりません。

しかも、現在は最大3万円の引っ越し支援金と、1ヶ月のフリーレント(家賃無料)もついてきます。

さすがに築40年以上といっても、ここまでの条件を出す賃貸住宅はまずないでしょう。

仕入れ単価が1戸100万円で、家賃が3万円だとすれば、その利回りは36%にもなります。

もちろん稼働率にもよりますが、これだけ安く貸しても得られるリターンは計り知れないでしょう。

「ビレッジハウス」の5つの脅威

一般の投資家にとって脅威になるビレッジハウスの特徴は次の5点です。

1. 与信審査が緩く、職業・年齢・国籍不問。高齢者や外国人、母子家庭やフリーターなど、一般的に入居審査に通りにくい人も大歓迎。

2. 敷金ゼロ、礼金ゼロ、更新料ゼロ、共益費ゼロ。

3. 仲介会社を経由せずに自社サイトから申込んだ場合、仲介手数料不要。

4. 初期費用が安く、対象物件は1ヶ月分のフリーレントが付くので、条件によっては火災保険料のみで入居できてしまう。

5. その場で申込みが可能で、銀行印、身分証明書、収入証明を持参すればOK(ただし審査状況により他の書類提出が必要になる場合がある)。

ビレッジハウスが登場してからというもの、近隣大家さんの物件の入居付けが徐々に厳しくなっているようです。

そもそもビレッジハウスは価格破壊レベルの格安賃貸であり、なおかつ入居条件が緩いですから、周辺の大家さんはたまったものではありません。

開業当初は軽いリフォーム程度の物件が多かったようですが、最近はリフォームのクオリティーが上がり、営業も強化されてきていることから、周辺の大家さんはかなり苦戦を強いられているようです。

一方、悪い噂も

とはいえ、物件の古さゆえに悪い書き込みがあるのも事実です。

建物が古い、冬寒い、雨漏りがする、近隣住民のマナーが悪い等・・・。

いわゆる“安かろう悪かろうという”というネガティブなイメージが定着していたようですが、最近はリフォームのクオリティーが上がってきており、これらの問題は改善してきているのではないかと思います。

レオパレス物件がビレッジハウス化する未来

2018年に「ガイアの夜明け」で施工不良をすっぱ抜かれ、現在、再建中のレオパレス21ですが、フォートレスの資金サポートのもと、改修工事をしっかり実施していくと思います。

また、現在レオパレスがサブリース契約をしている物件も、しばらくの間は騒ぎになるような家賃減額要求をすることはないでしょう。

しかし、数年後にすべての改修工事が済んだ後、採算の合わない物件のサブリース家賃の引き下げを要求してくるのではないかと思います。

さらに、背に腹をかえられない大家さんには、物件の買収提案もあるかもしれません。

そして、買収した物件から低価格賃貸のビレッジハウスに変わってくると思えてならないのです。

フォートレスは今後さらなる資金供給をしていくでしょうから、最終的にレオパレスはフォートレスに買収されて飲み込まれる・・・というのがシナリオなのではないかと思います。

つまり、最終的にフォートレスは、全国3万9,000棟のレオパレス物件のオーナーを狙っているということで間違いないでしょう。

もしこれが実現すれば、最大67万戸もの物件がビレッジハウス化しますから、これは大家さんにとって大変な脅威です。

競合エリアの物件に注意

ビレッジハウスが展開するエリアは、もとが公団スタイルということもあり、いわゆる都心というよりも郊外型がほとんどです。

これから物件を購入される方は、ビレッジハウスと競合するエリアであれば、同じような間取りや価格帯の物件は避けたほうが無難でしょう。

もちろん、建物の仕様や設備で差別化を図って家賃的に狙うべき入居者のターゲットが異なるなら十分戦えるケースもあるでしょうが、条件が競合している場合には、遅かれ早かれ消耗戦になっていくと思いますので、早めの売却を検討した方がいいケースもあるかもしれません。

健全な資産形成が必要

これまで、レオパレスは地主を食い物に成長してきたわけですが、今度は投資ファンドがレオパレスを買収し、低所得者層に低家賃で賃貸物件を供給していくという、なんとも皮肉な食物連鎖が起こっています。

私たちはこういったマネーゲームに巻き込まれないようしっかりと勉強し、健全な資産づくりをしていかなければなりません

不動産投資の成功は、いかに「現場で使えるノウハウ」「体系的」に学ぶかにかかっています。

そしてそれを学ぶ一番の方法は、いつでも、どこでも、誰でも、学べる不動産実務検定です。ぜひ一緒に学びましょう。