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大家さんが知っておくべき災害知識と今後の備え

公開日: 2021年09月01日

ハザードマップを活用し災害の危険度を事前調査

少し前に神奈川県の熱海市で豪雨による土石流が発生し、民家など130棟あまりが甚大な被害を受けた災害が発生しました。

現在の日本は天災国家と言われ、毎年どこかで自然災害が発生しています。

台風、洪水、土砂崩れ、土石流、さらに地震や津波など「どこで賃貸物件を所有していても何かしらの天災に見舞われる可能性」があるわけです。

ところが、事前にある程度の自然災害が予想できる点については、あまり知られていないのが現状です。

災害の知識と備え

そこで今回は、自然災害から大家さんの資産と入居者様の命を守り、安定運営を実現するために知っておきたい災害リスクの確認の仕方について解説します。

この方法は、新規物件を購入する際のリスクヘッジとしても非常に有効です。

最初に、熱海市の土石流災害の発生理由について解説していきます。

元々、被害に遭った伊豆山地区は熱海市の土砂災害ハザードマップで警戒区域に指定されていました。

そして、今回の災害の最大要因は大雨ですが、最上部に違法造成された盛土があり、それが被害を拡大したと考えられています。

つまり「天災+人災」なわけです。

人災で被害が拡大したと思うとやるせない気持ちにもなりますが、不動産の購入時や賃貸物件を貸し出す際には、天災リスクについて重要事項説明で必ず説明しなければいけません。

その代表的な天災リスクが次の3つになります。

①造成宅地防災区域

宅地造成工事規制区域に指定されていない土地で、必要があると認められる時には都道府県知事が市町村長の意見を聞いて、造成宅地防災区域に指定できます。

具体的には、宅地造成工事規制区域外の土地で、盛土をする前の地盤面が水平面に対し20度以上の角度、さらに盛土の高さが5m以上ある一団の造成宅地です。

この区域に指定された宅地の所有者や開発者は、災害防止のための措置として擁壁の設置、または改造、その他必要な措置を講ずるよう努めることになっています。

さらに、都道府県知事は所有者に擁壁等の設置勧告や命令もできることになっています。

つまり、造成宅地防災区域に指定されている土地は将来「災害防止のための措置に資金がかかる可能性がある」わけです。

ちなみに、宅地造成工事規制区域は、次のケースの造成工事の場合に知事の許可が必要になります。

■2mを超える切土や1mを超える盛土をするケース
海と山に囲まれた熱海市の場合は、市の約70%の地域が宅地造成工事規制区域にかかっています。

②土砂災害警戒区域

急な傾斜地の崩壊等が発生した場合に住民等の生命、または身体に危害が生ずる恐れがあると認められ「警戒避難体制を特に整備すべき」として指定されている区域です。

ちなみに、土砂災害は急傾斜地の崩壊、土石流および地滑りにより生じるとされていますが、この区域は住民に土砂災害ハザードマップを配布しリスクを周知したり、情報の伝達方法を確立するなど、避難体制が整備されることになっています。

また、土砂災害警戒区域には開発を制限したり建物の構造を規制する特別警戒区域もあります。

この区域内で宅地分譲をする場合は開発行為の許可が必要で、土砂災害を防止したり被害を軽減できる構造でなければいけません。

状況によっては、該当区域から移転勧告をされる場合もあります。

そのため、一般的に「物件を所有するべき地域ではない」と言えます。

③津波災害警戒区域

津波が発生した場合に「人的災害を防止するために警戒避難体制を特に整備すべき」として指定された区域です。

この区域内では、津波が発生した時の避難施設の指定など、避難に必要な措置が講じられています。

最後に、大家さんが所有物件の安全性を確認したり、新規購入する際などに、簡単にリスク調査ができるハザードマップの活用法をご紹介しておきます。

基本的に、全国のハザードマップは『ハザードマップポータルサイト』で調べられます。

国土交通省が運営しているサイトでは『重ねるハザードマップ』(災害リスク情報を地図に重ねて表示可能なタイプで、拡大すれば対象の建物にハザードマップがかかっているかチェック可能)と『わがまちハザードマップ』(市区町村が作成したハザードマップにダイレクトにリンクされたタイプ)の2種類が用意されています。

使用方法としては、最初に『重ねるハザードマップ』で大まかに調査してから、『わがまちハザードマップ』で詳細をチェックするのが良いと思います。

さらに、水害ハザードマップ(大雨で河川が増水したり堤防が決壊するなど、氾濫が発生した時に浸水が想定される範囲や地域の避難場所が指定されている地図)も有効です。

海の近くの土地であれば、高潮による浸水範囲なども表示されています。

最後に

今回ご紹介した災害の種類や規制、さらにハザードマップなどは誰でも簡単に調べられます。

満室経営を実現するには、リスクを事前に予測し備えることが欠かせません。

みなさんも日頃から、しっかりと知識を身につけておきましょう。