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完成間近でなぜ?国立市の積水マンション解体について
公開日: 2024年06月12日
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こんにちは!YouTuber ウラケン不動産です。
先日、びっくりするようなニュースが飛び込んできました。
「今月(2024年6月)に完成予定だった国立市に新築中の分譲マンションを、建築主の積水ハウスが解体することを決めた」というニュースです。
ほぼ完成している新築マンションを引き渡し前に解体・・・ちょっとびっくりですよね。
そこで今回の記事では、僕のゼネコン営業マン時代の経験も踏まえ、このニュースの裏で一体何が起きているのか?を解説します。
ぜひ最後までご覧ください!
- トラブルの概要
物件が建つと、富士山が隠れてしまう!?
- 昔から住民の建築反対運動が多いエリアだった
- 建築確認申請の基本
- 近隣住民の“同意”は不要
- 建築後に解体するのは異例の事態
- 僕が推測する、解体を決めた2つの理由
- 1.会社の評判を落とすよりも、購入者に違約金を払った方が良いと本社が判断した?
- 2.近隣住民が、条例/建築違反の証拠を掴んだ?
- まとめ
トラブルの概要
物件が建つと、富士山が隠れてしまう!?
まずは問題になっている物件について紹介しましょう。
今回、積水ハウスが建築していたのは、地上10階建て全18戸の小規模な分譲マンションです。このマンションを、国立駅から徒歩10分の富士見通りに建設していたんですよね。
この立地ですが、「富士見通り」という名前の通り、通りの真正面に富士山がドーンと見える場所でした。しかし、今回の分譲マンションが建設されると、富士山が半分ほど隠れてしまうのです。

昔から住民の建築反対運動が多いエリアだった
今回問題の舞台となっている国立市は、そもそも低層住居専用地域が多いエリアで、背の低い住宅が立ち並んでいます。そのため、昔から住民の建築反対運動が多いエリアとして関係者の間では有名だったんですよね。
ただし、いくら低層地域とはいっても、この「富士見通り」の両脇は近隣商業地域です。積水の他にも、8階建てくらいのマンションがいくつか建っています。
それでも計画当初から近隣住民の反対運動に直面していたそうで、建築確認申請の前に、11階建てを10階建てに変更したという経緯もあったそうです。
しかし、建築が始まってからも依然として反対運動があり、ネット情報によると、国立駅の前で署名運動をしている市民団体もいた模様です。
そして、完成引き渡し間近になって、積水ハウスが自主的に事業の廃止届を役所に提出した・・・というわけなんですね。
建築確認申請の基本
さて、解体の背景を考えるにあたり、まず建築確認申請の手続きを整理しておきましょう。
住宅地にかかるエリアに高層の建物を建築する時には、その建物の高さの1倍~2倍(エリアによる)の半径の世帯に、近隣説明をしないといけません。
説明については一軒一軒回って行うか、どこかに集まってもらって説明会を開催するか、いずれかの方法がとられます。
僕もゼネコンの営業マン時代、近隣住民へは一軒一軒、足で回って説明していました。場合によっては対象世帯が300軒ほどにも及ぶので、非常に骨が折れる仕事です。
しかし、近隣住民を一斉に集めて説明会を開催すると、徒党を組まれる可能性があります。そのため、面倒でも一軒一軒回って説明した方が良いんですよね。
近隣住民の“同意”は不要
しかし、実は建物の建築にあたっては、近隣住民への「説明」は必要なものの、近隣住民の「同意」は不要です。
むしろ、住民の同意を不要とするために、用途制限や高さ制限といった法令や建築基準法があるわけです。
近隣住民が納得しないと建築はできないとしてしまうと、何のための法律かわからなくなってしまいますしね。
しかし、近隣住宅へ説明しにいくと、法律を知らない近隣の人からは
「日照権はどうなるんだ!陰になってしまうだろう」
などと、的を射ないクレームを言われたりします。
建築後に解体するのは異例の事態
今回の件で積水が建築許可をとったということは、近隣説明もしっかりして、建築基準法にも市の条例にも合致しているはずです。
僕のゼネコン営業マン経験からいうと、建築違反をしたわけでもないのに、近隣住民の反対でほぼ完成したマンションを取り壊す・・・というのは極めて異例な事態です。
いくら住民の反対運動が大きいからといって、法律に則っている限り、流石に解体までする必要はなかったのでは・・・というのが僕の意見です。
では一体、裏で何が起きていたのでしょうか。
僕が推測する、解体を決めた2つの理由
積水ハウスはなぜ自主的に解体を決めたのでしょうか。とても不可解なのですが、推測して2つの理由を考えたので、お話ししていきましょう。
1.会社の評判を落とすよりも、購入者に違約金を払った方が良いと本社が判断した?
まず考えられる理由の1つは、「会社の評判を落とすよりも、購入者に違約金を払って解体した方が得策と本社が判断した」ということです。
積水ハウスのメイン事業は、戸建ての請負事業です。分譲マンションの倍の4,700億円の売上があります。
今回のマンションの周辺でも積水の戸建てはあるでしょうし、今後も請け負うはずです。
ですから、今回のわずか18戸のマンションのために悪評が広がり、将来の戸建て受注を棒に振るのは得策でないと考えた、という可能性が1つあると思います。
2.近隣住民が、条例/建築違反の証拠を掴んだ?
考えられる理由の2つ目は、「近隣住民が、条例/建築違反の証拠を掴んだ」ということです。
実は、このケースに近い事例が昨年(2023年)8月に起きています。
文京区の8階建ての分譲マンションは、ほぼ完成した状態のまま、近隣住民の反対運動で8年間引き渡しが中断していました。
そこで近隣住民が建築確認の審査請求を都に出した結果、避難路の確保ができていないことが発覚し、都が建築途中で建築確認を取り消した・・・という裁判沙汰になりました。
裁判でも違反が認められ、デベロッパーは解体・建て直しを決断しました。
ネットの情報によると、今回の案件では、反対側の弁護士が積水側の違反を見つけたというような書き込みがありました。
もし違反が本当にあったのなら、泥沼化する前に積水側が自ら身を引いたことも考えられます。
まとめ
というわけで今回は、「完成間近でなぜ?国立市の積水マンション解体について」というテーマでお話ししてきました。
積水ハウスは3兆円企業なので、分譲マンションの解体費1~2億円程度はかすり傷にもなりません。
しかし、かわいそうなのは、引っ越しを心待ちにしていた購入者です。今、住んでいる家を既に売ってしまって途方にくれている世帯もあるといいます。そう思うと何ともいたたまれない話です。
真相は闇に葬られると思いますが、もし建築違反がなかったのであれば、近隣住民の反対運動は行き過ぎていると僕は思います。
皆さんはどう思うでしょうか?ぜひ参考にしてみてください!
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こんにちは!YouTuber ウラケン不動産です。
先日、びっくりするようなニュースが飛び込んできました。
「今月(2024年6月)に完成予定だった国立市に新築中の分譲マンションを、建築主の積水ハウスが解体することを決めた」というニュースです。
ほぼ完成している新築マンションを引き渡し前に解体・・・ちょっとびっくりですよね。
そこで今回の記事では、僕のゼネコン営業マン時代の経験も踏まえ、このニュースの裏で一体何が起きているのか?を解説します。
ぜひ最後までご覧ください!
- トラブルの概要
物件が建つと、富士山が隠れてしまう!? - 昔から住民の建築反対運動が多いエリアだった
- 建築確認申請の基本
- 近隣住民の“同意”は不要
- 建築後に解体するのは異例の事態
- 僕が推測する、解体を決めた2つの理由
- 1.会社の評判を落とすよりも、購入者に違約金を払った方が良いと本社が判断した?
- 2.近隣住民が、条例/建築違反の証拠を掴んだ?
- まとめ
トラブルの概要
物件が建つと、富士山が隠れてしまう!?
まずは問題になっている物件について紹介しましょう。
今回、積水ハウスが建築していたのは、地上10階建て全18戸の小規模な分譲マンションです。このマンションを、国立駅から徒歩10分の富士見通りに建設していたんですよね。
この立地ですが、「富士見通り」という名前の通り、通りの真正面に富士山がドーンと見える場所でした。しかし、今回の分譲マンションが建設されると、富士山が半分ほど隠れてしまうのです。
昔から住民の建築反対運動が多いエリアだった
今回問題の舞台となっている国立市は、そもそも低層住居専用地域が多いエリアで、背の低い住宅が立ち並んでいます。そのため、昔から住民の建築反対運動が多いエリアとして関係者の間では有名だったんですよね。
ただし、いくら低層地域とはいっても、この「富士見通り」の両脇は近隣商業地域です。積水の他にも、8階建てくらいのマンションがいくつか建っています。
それでも計画当初から近隣住民の反対運動に直面していたそうで、建築確認申請の前に、11階建てを10階建てに変更したという経緯もあったそうです。
しかし、建築が始まってからも依然として反対運動があり、ネット情報によると、国立駅の前で署名運動をしている市民団体もいた模様です。
そして、完成引き渡し間近になって、積水ハウスが自主的に事業の廃止届を役所に提出した・・・というわけなんですね。
建築確認申請の基本
さて、解体の背景を考えるにあたり、まず建築確認申請の手続きを整理しておきましょう。住宅地にかかるエリアに高層の建物を建築する時には、その建物の高さの1倍~2倍(エリアによる)の半径の世帯に、近隣説明をしないといけません。
説明については一軒一軒回って行うか、どこかに集まってもらって説明会を開催するか、いずれかの方法がとられます。
僕もゼネコンの営業マン時代、近隣住民へは一軒一軒、足で回って説明していました。場合によっては対象世帯が300軒ほどにも及ぶので、非常に骨が折れる仕事です。
しかし、近隣住民を一斉に集めて説明会を開催すると、徒党を組まれる可能性があります。そのため、面倒でも一軒一軒回って説明した方が良いんですよね。
近隣住民の“同意”は不要
しかし、実は建物の建築にあたっては、近隣住民への「説明」は必要なものの、近隣住民の「同意」は不要です。
むしろ、住民の同意を不要とするために、用途制限や高さ制限といった法令や建築基準法があるわけです。
近隣住民が納得しないと建築はできないとしてしまうと、何のための法律かわからなくなってしまいますしね。
しかし、近隣住宅へ説明しにいくと、法律を知らない近隣の人からは
「日照権はどうなるんだ!陰になってしまうだろう」
などと、的を射ないクレームを言われたりします。
建築後に解体するのは異例の事態
今回の件で積水が建築許可をとったということは、近隣説明もしっかりして、建築基準法にも市の条例にも合致しているはずです。
僕のゼネコン営業マン経験からいうと、建築違反をしたわけでもないのに、近隣住民の反対でほぼ完成したマンションを取り壊す・・・というのは極めて異例な事態です。
いくら住民の反対運動が大きいからといって、法律に則っている限り、流石に解体までする必要はなかったのでは・・・というのが僕の意見です。
では一体、裏で何が起きていたのでしょうか。
僕が推測する、解体を決めた2つの理由
積水ハウスはなぜ自主的に解体を決めたのでしょうか。とても不可解なのですが、推測して2つの理由を考えたので、お話ししていきましょう。1.会社の評判を落とすよりも、購入者に違約金を払った方が良いと本社が判断した?
まず考えられる理由の1つは、「会社の評判を落とすよりも、購入者に違約金を払って解体した方が得策と本社が判断した」ということです。
積水ハウスのメイン事業は、戸建ての請負事業です。分譲マンションの倍の4,700億円の売上があります。
今回のマンションの周辺でも積水の戸建てはあるでしょうし、今後も請け負うはずです。
ですから、今回のわずか18戸のマンションのために悪評が広がり、将来の戸建て受注を棒に振るのは得策でないと考えた、という可能性が1つあると思います。
2.近隣住民が、条例/建築違反の証拠を掴んだ?
考えられる理由の2つ目は、「近隣住民が、条例/建築違反の証拠を掴んだ」ということです。
実は、このケースに近い事例が昨年(2023年)8月に起きています。
文京区の8階建ての分譲マンションは、ほぼ完成した状態のまま、近隣住民の反対運動で8年間引き渡しが中断していました。
そこで近隣住民が建築確認の審査請求を都に出した結果、避難路の確保ができていないことが発覚し、都が建築途中で建築確認を取り消した・・・という裁判沙汰になりました。
裁判でも違反が認められ、デベロッパーは解体・建て直しを決断しました。
ネットの情報によると、今回の案件では、反対側の弁護士が積水側の違反を見つけたというような書き込みがありました。
もし違反が本当にあったのなら、泥沼化する前に積水側が自ら身を引いたことも考えられます。
まとめ
というわけで今回は、「完成間近でなぜ?国立市の積水マンション解体について」というテーマでお話ししてきました。積水ハウスは3兆円企業なので、分譲マンションの解体費1~2億円程度はかすり傷にもなりません。
しかし、かわいそうなのは、引っ越しを心待ちにしていた購入者です。今、住んでいる家を既に売ってしまって途方にくれている世帯もあるといいます。そう思うと何ともいたたまれない話です。
真相は闇に葬られると思いますが、もし建築違反がなかったのであれば、近隣住民の反対運動は行き過ぎていると僕は思います。
皆さんはどう思うでしょうか?ぜひ参考にしてみてください!
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