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日本の分譲マンションが建て替え不可能な理由

公開日: 2024年11月01日

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こんにちは!YouTuber ウラケン不動産です。

先日の日経新聞に、日本の分譲マンションの建て替えは、ほぼ不可能な状況という内容の記事がありました。

この記事によると、関東や関西の人気エリアの物件では、所有者1人あたり2,000万円を拠出しても、99%以上が建て替え困難という試算が出たそうです。

一体どういうことなのでしょうか?

今回は日本の分譲マンションの建て替え問題について詳しく解説します。ぜひ最後までご覧ください!


分譲マンションの建て替えは、修繕費が貯まっていても大変
これまでは容積率緩和で建て替え費用を賄っていた
インフレにより、建て替え費用は高騰
法規制と近隣対策が課題
建て替えを前提にすることが間違い
日本とは真逆のヨーロッパの家
日本の住宅は、日本政府の過去の失策
中古市場の活性化と補助制度が必要

 

分譲マンションの建て替えは、修繕費が貯まっていても大変

そもそも日本の分譲マンションの建て替えは、組合で決議して決めるべきことです。

新築から50~60年が経過し、それなりの修繕費が貯まってくると、建て替えについて話し合われるようになります。

しかし、実現はなかなか大変なんですよね。

例えば、50戸のマンションを解体して新しく50戸の建物を建てる場合、ある程度の修繕積立金があったとしても、居住者が建て替え費用を負担しなければなりません

これまでは容積率緩和で建て替え費用を賄っていた


実は、これまでに建て替えに成功したマンションも存在します。

その手法は、容積率の緩和によって得られた増築分の部屋を販売し、その収益で建て替え費用を賄うというものでした。

例えば、これまで5階建てのマンションだったところを、 10階建てにすることで部屋数を2倍にします。

その増えた部屋を分譲して、得られた資金を建て替え費用に充てることで、住民の負担を軽減するという手法だったわけですね。

インフレにより、建て替え費用は高騰


しかし、昨今のインフレで建築費や人件費が高騰し、この容積率緩和の手法を活用しても、住民の負担を大きく軽減することはできなくなってしまいました

20 年前と比較すると、そのコストは約5倍にも膨れ上がっているんですよね。

結果として冒頭にあった通り、「所有者1人あたり2,000万円を拠出しても、99%以上が建て替えが困難」という事態になってしまっています。

では、「2,000万円を負担してでも建て替えたいか?」と聞かれると、「もう先も短いし、修繕でいいよ」と考える方も恐らく多いのだと思います。


法規制と近隣対策が課題


また、容積率を緩和するのもなかなか難しいという問題もあります。

容積率は地方自治体が決めているものなので、自治体の意向で自由に変えることは可能です。

では、容積率を緩和するとどのようなことが起こるのでしょうか?

例えば、建て替える建物の北側にある家は、日陰の部分が増えることになってしまいます。

また、分譲マンションの容積率を増やしてそれを販売するといっても、全国のマンションは必ずしも都心にあるわけではありません。

地方都市の少し離れたところにも分譲マンションはありますから、そのようなマンションを購入する人がいるのか?という問題にもなってくるんですよね。

特に、周辺の建物の日陰規制が緩和されることで、近隣住民からの反対、法的・社会的な障害は大きな問題になってくると思います。

こうした問題を解決するためには、抜本的な建築基準法の改正が必要だと思いますが、改正をしたとしても、地域の紛争というのは必ず起こってくると思います。


建て替えを前提にすることが間違い

僕は、建て替えることを前提にするということが、そもそも間違っていると思っています。

容積率を増やして販売したとしても、2,000万円の負担が発生します。

老後2,000万円問題が騒がれているのに、さらに家自体にも2,000万円の負担がかかってしまうわけです。

今のご時世、金銭的に余裕のある人ばかりではありません。

だからこそ、建て替えを前提にすること自体が根本的に難しいのではないか?と僕は思います。

日本とは真逆のヨーロッパの家


実を言うと、ヨーロッパの考え方は日本と正反対です。

ヨーロッパでは、建物は長期間維持するものであるという価値観があります。

実際、適切なメンテナンスをしながら200年以上が経過した建物はヨーロッパにはたくさんあります

例えば、イギリスとかフランスあたりに行くと、200年以上が経過している家なんてゴロゴロあり、逆に新築が珍しいみたいなわけです。

一度建物を建てたら、それを延々と受け継いでいくという考え方があり、その考えを元に中古市場が成立しています。

日本のように、 40年50 年で建物価値がゼロになってしまうということもないですから、自ずと物件価格も上昇していくわけですよね。

なぜなら、供給も絞られているからです。

むやみに建て替えをすることができない文化になっているので、物件自体が未来永劫維持されるような設計になっていて、修繕管理をしながら建物の価値を維持させていく・・・というわけです。

日本の住宅は、日本政府の過去の失策


翻って日本ってどうなのでしょうか?

技術的な話をすると、そもそもコンクリートの耐久性は一般的に100 年程度と言われています。

しかし、実際には適切なメンテナンスをしていれば130年くらいは持つと思いますし、高強度のコンクリートを使えば150 年くらいは全然持つわけなんですよね。

もちろん、日本はヨーロッパと違って高温多湿なのでコンクリートが劣化するスピードは早いのですが、「外断熱」にすることによって躯体の劣化を抑えることもできます

しかし、日本政府は安普請な住宅を供給することを推進した結果、「内断熱」が主流になっています。内断熱にすると躯体の劣化が早くなるわけです。

中古市場の活性化と補助制度が必要


現在は、省エネ住宅だとかそんな名目で融資の基準が下がったり、税制優遇措置を受けられたりしますが、正直、過去の日本政府の失策を取り戻しているようなものなんですよね。

やはり、高断熱・高気密・高耐久な家を建てていくことによって将来的なエネルギー効率を本質的に向上させていくべきだと思います。

既存の家についても、建て替えを前提にするのではなく、開口部の窓を高断熱なものにするなど、そういうところに補助金をつけながら、建物を長く維持できるようなフォローをした方が良いと思います。


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