ブログ
定期借家契約が普及しない本当の理由
公開日: 2026年10月14日
▼今日の記事を音声で楽しみたい方はこちら
先日、北海道大家塾の100回記念で講演をしてきました。
そこで多くの参加者から聞いたのが、「北海道では定借(定期借家契約)が全く進んでいない」という話です。
一部のウラケンサロンメンバーさんは北海道でも定借で契約をされていますが、体感的には9割9分の方が普通借家契約を採用していたんですね。
実は僕、20年以上前に札幌の手稲で6戸のアパートを建てたとき、地元の不動産業者に無理を言って定期借家を導入しています。
北海道でも定借で入居者は決まるし、問題なく契約できる。
それを自ら証明したつもりでした。
それから、その事例を北海道の仲間にも共有し、徐々に定借は広がっている、というのが僕の認識でした。
ところが、実態は全く進んでいなかったのです。
一方で東京では、「定期借家が広がって、借りても住み続けられなくなる」という誤った知識による論調も出てきています。
東京では「悪」として語られ、北海道ではそもそも使われていないという現実があるようです。
そこで今回は、定借は本当に「悪」なのか、そしてなぜ広がらないのかを、現場の目線で整理してみたいと思います。
それだけならまだしも、誤った理解のまま、入居者さんを僕たちが意図しない方向に教育してしまっている、ここが問題の根源だと思っています。
具体的には、「定借は、契約期間が満了したら必ず退去しなければならない契約です」という説明です。
これを聞いたら、誰だって定借の部屋は避けますよね。
数年ごとに追い出される契約だと思えば、「悪」に見えるのは当然です。
でも、大家の立場からすれば、いい入居者さんなら再契約して長く住んでほしいのが当たり前です。
わざわざ空室をつくって、広告料を払って、次の入居者を探したい大家なんていません。
そこで僕の会社では、「再契約型の定期借家」であることを、あらかじめ広告でもうたっています。
入居期間中に問題がなければ再契約できますよ、と最初から伝えておくわけです。
その結果、当初は定期借家契約に消極的だった客付業者さんも、入居者を紹介してくれるようになりました。
ここからは僕の推測ですが、理由は手間とコストだと思います。
普通借家の更新なら、ある意味、更新契約書を紙ペラ1枚送って返送してもらうだけで業務が完了します。
それで更新手数料が入るわけですから、管理会社にとってはこれほど都合のいい仕組みはありません。
一方、定借だと2年ごとに再契約の業務が入ります。
重要事項の作成と説明、契約書の作成と説明、新規入居と同じ手間がかかります。
さらに、最近は家賃の値上げ交渉もしなければなりません。
しかも、期間1年以上の定借では、満了の1年前から6か月前までの間に「契約が終了します」という通知を入居者に出さなければなりません。
この通知を忘れると、そこからまた6か月経つまで終了ができなくなってしまいます。
更新契約書一枚を送って終わりになる簡単な業務ではありません。
なので、当社は2026年に入って宅建資格を持つスタッフを含め、新たに3人増員しました。
このように、定借の導入は社員教育にも時間とコストがかかりますし、事務の不手際がそのままトラブルにつながりかねないわけです。
あえて面倒な業務を抱え、しかもミスをすればトラブルになりかねない定借は流行らせない—おそらくそういう判断なのではないでしょうか。
説明する手間や再契約の手間を避けたい業者が、「定借だと家賃を下げないと決まりませんよ」「定借では礼金は取れませんよ」と、自分の感想に基づく誤った情報を大家さんに垂れ流している。
それを聞いた大家さんは定借をあきらめ、入居者さんは「定借=追い出される契約」と思い込む。
どうやら、マーケット全体がこの勘違いに支配されているようなんですね。
ポータルサイトの検索もよく引き合いに出されます。
たしかに検索条件で「定期借家を除く」にチェックを入れれば、定借の物件は外せます。
業者さんは「だから定借は検索されにくくなる」と説明しているのでしょう。
でも、入居希望者の全員がそうやって検索しているとは、僕にはとても思えません。
現に、当社は1,000戸を超えるほぼ全ての管理物件を定借で広告していますが、ほぼ満室で経営できています。
20年以上前に新築した手稲のアパートも、定借で入居者はちゃんと決まりました。
定借だから決まらないのではなく、業者がやりたがらないから広がらない。
これが実態だと思います。
いずれにしても、北海道の不動産業者は定期借家契約に非協力的だということが、今回よくわかりました。
定借は、本当に「悪」なのでしょうか。
結論を言うと、僕は定借が悪いのではなく、普通借家のほうが歪んでいると考えています。
普通借家では、いったん貸したら大家の側からの契約解除はほとんどできません。
家賃の値上げも、入居者が拒否すれば最終的には裁判所の判断を仰ぐしかない。
だから大家は、貸すときに過剰に身構えるんですね。
高齢者を断り、外国人を断り、生活保護の方を断る。
「一度貸したら終わり」だから、入口を狭くするしかないのです。
それどころか、大家が簡単には値上げができないのを逆手にとって、「文句があるなら調停してください」と平気で言ってくる図々しい入居者さんもいます。
普通借家の守りの強さが、こういう一部の人に悪用されているわけです。
定借はその逆です。
期間が区切られているので、ルールを守らない入居者さんとは再契約しないという選択ができる。
だからトラブルは激減しますし、再契約のタイミングで家賃も相場に合わせて上げやすくなります。
大家にとってのメリットは、はっきりしているのです。
そして期間が区切られているからこそ、大家は安心して入口を広げられます。
つまり定借は貸す側の武器であると同時に、借りる側の門を広げる仕組みでもあるわけです。
一方で入居者にも不良入居者を排除できるというメリットがあります。
夜中に大声を出す。
ゴミ出しのルールを守らない、そんな入居者は契約満了とともに退去させることができるので生活環境が良くなります。
もちろん、家賃を上げるためだけに定借を使い、再契約のたびに大幅な値上げを迫るような使い方をすれば、それこそ「悪」と言われても仕方ないでしょう。
でもそれは制度の問題ではなく、使い方の問題です。
再契約を前提に、いい入居者さんには長く住んでもらう。
そのための定借であれば、入居者にとっても決して不利な話ではないのです。
それでも入居者は決まりましたし、問題なく契約できました。
北海道だから定借が使えない、ということはないのです。
いま、札幌の大家さんから定借への切り替えのご相談をいただいています。
もう一度、風穴を開けに行きたいと思っています。
▼ウラケンに質問できるオンラインサロンはこちら

▼LINE登録すると最新情報をいち早くゲットできます
先日、北海道大家塾の100回記念で講演をしてきました。
そこで多くの参加者から聞いたのが、「北海道では定借(定期借家契約)が全く進んでいない」という話です。
一部のウラケンサロンメンバーさんは北海道でも定借で契約をされていますが、体感的には9割9分の方が普通借家契約を採用していたんですね。
実は僕、20年以上前に札幌の手稲で6戸のアパートを建てたとき、地元の不動産業者に無理を言って定期借家を導入しています。
北海道でも定借で入居者は決まるし、問題なく契約できる。
それを自ら証明したつもりでした。
それから、その事例を北海道の仲間にも共有し、徐々に定借は広がっている、というのが僕の認識でした。
ところが、実態は全く進んでいなかったのです。
一方で東京では、「定期借家が広がって、借りても住み続けられなくなる」という誤った知識による論調も出てきています。
東京では「悪」として語られ、北海道ではそもそも使われていないという現実があるようです。
そこで今回は、定借は本当に「悪」なのか、そしてなぜ広がらないのかを、現場の目線で整理してみたいと思います。
一番の弊害は、管理会社の「誤った教育」
北海道で定借が広がらない一番の弊害は、大手をはじめとした管理会社が、定借の取扱いを強く拒んでいることです。それだけならまだしも、誤った理解のまま、入居者さんを僕たちが意図しない方向に教育してしまっている、ここが問題の根源だと思っています。
具体的には、「定借は、契約期間が満了したら必ず退去しなければならない契約です」という説明です。
これを聞いたら、誰だって定借の部屋は避けますよね。
数年ごとに追い出される契約だと思えば、「悪」に見えるのは当然です。
でも、大家の立場からすれば、いい入居者さんなら再契約して長く住んでほしいのが当たり前です。
わざわざ空室をつくって、広告料を払って、次の入居者を探したい大家なんていません。
そこで僕の会社では、「再契約型の定期借家」であることを、あらかじめ広告でもうたっています。
入居期間中に問題がなければ再契約できますよ、と最初から伝えておくわけです。
その結果、当初は定期借家契約に消極的だった客付業者さんも、入居者を紹介してくれるようになりました。
なぜ管理会社は定借を嫌がるのか
では、なぜ管理会社は定借を嫌がるのか。ここからは僕の推測ですが、理由は手間とコストだと思います。
普通借家の更新なら、ある意味、更新契約書を紙ペラ1枚送って返送してもらうだけで業務が完了します。
それで更新手数料が入るわけですから、管理会社にとってはこれほど都合のいい仕組みはありません。
一方、定借だと2年ごとに再契約の業務が入ります。
重要事項の作成と説明、契約書の作成と説明、新規入居と同じ手間がかかります。
さらに、最近は家賃の値上げ交渉もしなければなりません。
しかも、期間1年以上の定借では、満了の1年前から6か月前までの間に「契約が終了します」という通知を入居者に出さなければなりません。
この通知を忘れると、そこからまた6か月経つまで終了ができなくなってしまいます。
更新契約書一枚を送って終わりになる簡単な業務ではありません。
なので、当社は2026年に入って宅建資格を持つスタッフを含め、新たに3人増員しました。
このように、定借の導入は社員教育にも時間とコストがかかりますし、事務の不手際がそのままトラブルにつながりかねないわけです。
あえて面倒な業務を抱え、しかもミスをすればトラブルになりかねない定借は流行らせない—おそらくそういう判断なのではないでしょうか。
マーケット全体が“勘違い”に支配されている
困るのは、その「面倒だからやりたくない」が、いつの間にか「定借は不利だ」という話にすり替わっていることです。説明する手間や再契約の手間を避けたい業者が、「定借だと家賃を下げないと決まりませんよ」「定借では礼金は取れませんよ」と、自分の感想に基づく誤った情報を大家さんに垂れ流している。
それを聞いた大家さんは定借をあきらめ、入居者さんは「定借=追い出される契約」と思い込む。
どうやら、マーケット全体がこの勘違いに支配されているようなんですね。
ポータルサイトの検索もよく引き合いに出されます。
たしかに検索条件で「定期借家を除く」にチェックを入れれば、定借の物件は外せます。
業者さんは「だから定借は検索されにくくなる」と説明しているのでしょう。
でも、入居希望者の全員がそうやって検索しているとは、僕にはとても思えません。
現に、当社は1,000戸を超えるほぼ全ての管理物件を定借で広告していますが、ほぼ満室で経営できています。
20年以上前に新築した手稲のアパートも、定借で入居者はちゃんと決まりました。
定借だから決まらないのではなく、業者がやりたがらないから広がらない。
これが実態だと思います。
いずれにしても、北海道の不動産業者は定期借家契約に非協力的だということが、今回よくわかりました。
定借が悪いのではなく、普通借家が歪んでいる
ここで、冒頭の問いに戻ります。定借は、本当に「悪」なのでしょうか。
結論を言うと、僕は定借が悪いのではなく、普通借家のほうが歪んでいると考えています。
普通借家では、いったん貸したら大家の側からの契約解除はほとんどできません。
家賃の値上げも、入居者が拒否すれば最終的には裁判所の判断を仰ぐしかない。
だから大家は、貸すときに過剰に身構えるんですね。
高齢者を断り、外国人を断り、生活保護の方を断る。
「一度貸したら終わり」だから、入口を狭くするしかないのです。
それどころか、大家が簡単には値上げができないのを逆手にとって、「文句があるなら調停してください」と平気で言ってくる図々しい入居者さんもいます。
普通借家の守りの強さが、こういう一部の人に悪用されているわけです。
定借はその逆です。
期間が区切られているので、ルールを守らない入居者さんとは再契約しないという選択ができる。
だからトラブルは激減しますし、再契約のタイミングで家賃も相場に合わせて上げやすくなります。
大家にとってのメリットは、はっきりしているのです。
そして期間が区切られているからこそ、大家は安心して入口を広げられます。
つまり定借は貸す側の武器であると同時に、借りる側の門を広げる仕組みでもあるわけです。
一方で入居者にも不良入居者を排除できるというメリットがあります。
夜中に大声を出す。
ゴミ出しのルールを守らない、そんな入居者は契約満了とともに退去させることができるので生活環境が良くなります。
もちろん、家賃を上げるためだけに定借を使い、再契約のたびに大幅な値上げを迫るような使い方をすれば、それこそ「悪」と言われても仕方ないでしょう。
でもそれは制度の問題ではなく、使い方の問題です。
再契約を前提に、いい入居者さんには長く住んでもらう。
そのための定借であれば、入居者にとっても決して不利な話ではないのです。
もう一度、風穴を開けに行きます
20年以上前に手稲で定借を導入したときも、地元の業者さんには最初、渋い顔をされました。それでも入居者は決まりましたし、問題なく契約できました。
北海道だから定借が使えない、ということはないのです。
いま、札幌の大家さんから定借への切り替えのご相談をいただいています。
もう一度、風穴を開けに行きたいと思っています。
▼ウラケンに質問できるオンラインサロンはこちら

▼LINE登録すると最新情報をいち早くゲットできます