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高齢者お断りアパートは消えていく!?高齢入居者のメリット、リスクとその対策

公開日: 2020年11月07日

世間ではよく、「高齢になると家を借りられなくなるから、マイホームを買っておいた方が良い」と言われます。

一方で、急激な人口減少によって空き家が急増するため高齢者の賃貸も問題ないのではないか、という意見もあります。

一体どちらの主張が正しいのでしょうか?

実際、これらの問題を検証するためのデータは存在しないため、どちらが正解かを決めつけることはできません。

高齢者の入居が拒否される一般的な理由としては、「年金生活だから家賃を滞納される可能性がある」というものがあります。

しかし、少なくとも私の物件や私の管理会社が管理する物件では、高齢者だからという理由だけで入居を拒否したことは一度もありません。

むしろ、私は高齢者の入居を積極的に受け入れています

なぜなら、高齢者を入居させるリスクをしっかりと把握し、そのリスクへの対策を取っておけば、高齢者ほど優良な入居者は存在しないと思っているからです。

そこで今回は、

  • 高齢者入居の実態とリスク
  • そのリスクをどのようにヘッジすればいいのか?
  • なぜ不動産投資家にとって高齢者が優良入居者になり得るのか?
について具体的に解説していきたいと思います。

この記事を最後までご覧いただければ、「一生賃貸か? それとも持ち家か?」と悩んでいる人は、「一生賃貸暮らしで大丈夫」という理由が分かるようになります。

また、不動産投資家にとっても非常に参考になる内容だと思いますので、ぜひ最後までご覧ください。

高齢者はなぜ大家から嫌われるのか?

まずは、「高齢者はなぜ大家から嫌われるのか?」その理由を解説していきたいと思います。

公益財団法人 日本賃貸住宅管理協会の実態調査によると、大家が拒否感を示す入居者の属性トップ3は、

①障害者
②単身の高齢者
③外国人


ということでした。

こうした方々を嫌がる理由は、近隣トラブルや家賃滞納、孤独死のリスクがあるからでしょう。

しかし、私はこれらの方々の入居を積極的に受け入れていますし、家賃を滞納された記憶も、孤独死で事故物件になった経験もありません。

むしろ、しっかりと家賃を支払っていただいているので、私にとっては大変優良な入居者でもあります。

ところが上記のデータからもわかるとおり、一般的にこうした属性の方々は大家さんから拒否感を示される対象であると思います。

今回のテーマは「高齢者」ですので、高齢者という属性の方の入居が拒否されてしまう理由について具体的に考えてみましょう。

私は、高齢者の入居が拒否される理由は4点あると考えています。

1. 収入が少ない
入居者が年金生活のみで収入が少なければ、大家としてはどうしても滞納のリスクを考えてしまうことでしょう。

2. 連帯保証人がいない
今後は連帯保証人も高齢者になる時代ですし、独身の高齢者であれば身寄りがいない可能性すらあります。

しかし、最近は連帯保証人の代わりに家賃滞納保証(※)を利用するようになってきていますので、この制度を利用すれば良いような気もします。

ただし、そこにも罠があります。それが3点目の理由です。

※『家賃滞納保証』とは、入居者が決められた期日までに家賃の支払いを行わなかった場合、滞納保証会社が立て替えて家主に滞納分の家賃を支払ってくれるというもの。

3. 家賃滞納保証に入れない
高齢者という理由だけで、家賃滞納保証の審査に落ちてしまうケースが多いようです。

家賃保証にも入れず、連帯保証人もいないからこそ、高齢者の入居は拒否されがちなのでしょう。

4. 孤独死のリスク
もし孤独死が発生してご遺体が腐乱した場合、異臭を除去したり、原状回復をしたりするにもかなりの費用が発生してしまいます。

さらには、遺品整理も問題になってきます。

事故物件になってしまえば次の入居者も決まりづらくなりますし、家賃を下げなければならないケースもあるでしょう。

もちろん、死亡して数日で発見できれば事故物件にはなりませんが、こういった面倒ごとを避けたいという理由から、高齢者の入居は嫌がられているわけです。

高齢入居者は今後、爆増していく

次に、今後の日本では高齢入居者が爆増していく点についてお話ししたいと思います。

今後の日本は少子高齢化によって人口が激減し、アパートの空室も増えていくことが予想されます。

平成30年住宅・土地統計調査」(総務省統計局)によると、日本の空き家の数はすでに846万戸以上となっていますし、そのうち4割が賃貸であると考えれば、実に300万戸以上のアパートが空室になっているのです。

そして、今後は4人に1人が生涯未婚という時代に突入し、それに伴って単身者が増えれば、一生賃貸派という考えを持つ方も増えてくると思います。

国立社会保障・人口問題研究所が発表した最新の人口将来推計によると、2040年には高齢世帯2242万世帯のうち約40%の896万世帯が1人暮らしとなることが推計されており、そのうち賃貸世帯が4割とすると、約358万世帯が高齢入居者ということになります。

このように、今後空室が増えていく一方で、高齢者の賃貸需要はますます増えていくのが現実なのです。

それでも私たちは高齢者の入居を拒否し続けるのでしょうか? 私の意見としては、高齢者の入居は積極的に受け入れるべきだと思いますし、実際に私は何年も前から高齢者の入居を受け入れています。

私が早くから高齢者の入居に注目していた理由は、実は世間には知られていないメリットがあるからなのです。

そこで次は、誰も知らない高齢者入居のメリットについて解説していきます。

誰も知らない、不動産投資家にとっての高齢者入居のメリット

一般的に高齢者というと、「お金がない」「孤独死しそう」などのマイナスのイメージを持たれることが多いと思いますが、実際には全ての高齢者が孤独死するわけではありませんし、むしろ私としては若者の自殺者の方が多いという印象を持っています。

さらに、高齢者はいったん入居したらよほどのことがない限り退去はしません。

また、高齢入居者をアパートの管理人として清掃などのアルバイトで雇えば、いくばくかの収入のサポートをすることもできると考えています。

このように、いったん入居すればそのまま長く入居し続けてくれるという点がメリットとして挙げられると思います。

とはいえ、やはり高齢者ですと連帯保証人や滞納保証もつきにくく、孤独死のリスクも気になるところだと思います。

しかし、実は民間や公的機関のセーフティネットを活用すれば、これらのリスクはほぼカバーできてしまうのです。

そこで最後に、高齢者入居のリスクヘッジとして、どのような制度を活用できるのかについて見ていきましょう。

高齢者入居のリスクヘッジ

家賃の滞納保証

まずは、家賃の滞納保証に関するリスクヘッジを解説していきます。

民間の滞納保証制度だと高齢者は審査に落ちてしまうことが多いですが、公的機関の滞納保証制度を活用すれば、高齢者でも家賃の滞納保証に加入することが可能です。

たとえば、一般財団法人 高齢者住宅財団では、高齢者だけでなく、障害者、母子家庭、そして外国人の家賃債務まで保証してくれます。

対象となる住宅は高齢者住宅財団と家賃債務保証制度の利用に関する基本約定を締結した賃貸住宅でないといけませんが、仮に基本約定を締結していなくとも、高齢者の入居申し込みがあってから同時並行で申請を出せば良い話なので、約定をしていないからといって利用できないと考える必要はありません。

次に対象世帯についてですが、高齢者世帯に限ってみれば、「60歳以上の方、または要介護・要支援認定を受けている60歳未満の方」というのが制度の対象です。

図1
出所:一般社団法人高齢者住宅財団「家賃債務保証」をもとに作成

保証の対象と限度額については、

①滞納家賃:月額家賃の12ヵ月分に相当する額
②原状回復費用および訴訟費用:月額家賃の9ヵ月分に相当する額

となります。

図1
出所:一般社団法人高齢者住宅財団「家賃債務保証」をもとに作成

ただし、民間の家賃滞納保証とは異なり、この保証が適用されるのは退去する場合に限るということですので注意が必要です。

また、将来生活保護者になってしまったとしても、各自治体には住宅補助として家賃の支援制度がありますので、これで家賃の滞納を防ぐことができます。

補助金額は世帯の人数や地域によって異なりますが、東京23区の単身者の場合、月額4万900円~5万3700円となっています。

この家賃補助は、毎月自治体から口座に支払われるので、自動引き落としをしておけば家賃を取りっぱぐれることはないと思います。

さらに、家主の代理受領が可能な場合もありますので、そのあたりは自治体に確認しておくことをオススメします。

孤独死

次に、孤独死のリスクヘッジについて解説します。

孤独死の防止方法としては、民間の見守り制度と自治体の見守り制度を利用する方法が考えられます。

たとえば、民間には警備会社の「ALSOK」や「セコム」が提供する高齢者サポートサービスというのがあります。

これはトイレや部屋にセンサーをつけて、入居者の動きがない場合に警備員が駆けつけるサービスで、月数千円程度で利用が可能です。

こうしたサービスを利用すれば、孤独死が放置されてしまう事態を事前に防止することができますね。

また、自治体の見守り制度については、消防署への緊急通報装置を無償で貸与してくれる制度や、地域のスタッフが週に1回以上入居者へ電話をかけたり、訪問をしてくれたりする制度があります。

大家側の対策としては、賃貸借契約時に「安否確認の電話をした際に応答がない場合、管理者が部屋に入って確認することができる」という許諾を事前にもらっておくと良いと思います。

そして、高齢者受け入れの際は孤独死保険への加入を必須にすると良いでしょう。

たとえば、「あそしあ」の少額短期保険には、大家の味方という商品があります。

これは主に入居者の死に対する保険で、もし孤独死や自殺、殺人などの死亡事故が起きてしまった場合に、最大6ヵ月分の家賃と、特殊清掃費用などの原状回復費用として300万円までが保証されます。

以前、私が所有する物件で若い入居者の孤独死があったのですが、この保険に入っていたおかげで一通りの費用を賄うことができました。

保険料も一室あたり月数百円と安いので、もしもの時のために加入をしておくことをオススメいたします。

コミュニケーション

高齢者入居のリスクヘッジ法として、最終的に行き着くのは我々大家と入居者同士のコミュニケーションです。

これからの時代、何かあったらすぐに連絡を取ることができるように、入居者同士のご近所づきあいを促すのも大家の務めではないかと思います。

具体的には、大家さん主催のバーベキューパーティー(もちろん費用は大家さん負担)を年に1~2回開いて入居者同士の交流を図るなど、何かあった時に連絡をしやすい、または連絡を受けやすい環境づくりをすることです。

こういった入居者同士のコミュニケーションは、孤独死の防止だけではなく、防犯にもつながりますのでぜひ参考にしていただければと思います。

まとめ

今回は高齢者の入居についてピックアップしましたが、いかがだったでしょうか?

もしあなたが大家さんなのであれば、しっかりと準備して高齢者を積極的に受け入れることによって、より安定した賃貸経営が実現できることがお分かりいただけたのではないでしょうか。

一方、一生賃貸派の高齢者にとっても、近い将来は安心して入居できる世の中がやってくるだろうと思います。

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