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空き家の実家を有効活用する5つの方法。放置すると固定資産税が6倍に

公開日: 2021年01月22日

2020年12月に「令和元年 空き家所有者実態調査(注1)」の結果が国土交通省から発表されましたが、それによると半数の空き家で腐朽や破損が見られたといいます。

また、今後5年程度「空き家にしておく」という回答が約3割を占め、理由としては「物置として必要」(60.3%)、「解体費用をかけたくない」(46.9%)の割合が高くなっています。

そこで今回は、空き家が社会問題化する実態と、空いた実家を有効活用する方法について解説します。

(注1)調査対象:「平成30年住宅・土地統計調査」(2018年10月1日現在)の調査区から無作為に抽出した調査区内において、「居住世帯のない住宅(空き家)を所有している」と回答した1万2,151世帯。有効回答数:5,791世帯。調査期間:2019年11月~20年1月。

実家の引き継ぎ問題をどうする?

40代、50代ともなると、実家の引き継ぎを考え始める方も多いでしょう。

私の実家はあまり資産もありませんので、そこまでの相続対策は必要ありませんが、それでも築40年程度の実家は引き継ぐことになると思います。

引き継いだ実家に誰かが住み続けてくれるなら何も問題はありませんが、もし相続を受けた後に実家の使い道がなくなってしまえば、固定資産税だけを無駄に支払い続けることになってしまいます。

おそらく、このような悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか?

もちろん、「実家を賃貸に出して家賃を徴収すれば良いじゃないか!」という意見もあることでしょう。

しかし、全ての実家が東京都内など賃貸需要の多い地域に建っているわけではありません。

例えば実家が田舎にある場合などは、賃借人を探すだけで大変苦労することでしょう。

そこで本稿では、

  • 空き家が社会問題化する実態
  • あなたが将来的に実家を相続した時に、その実家をそのまま放置しておいたらどうなってしまうのか?
  • 空いた実家を有効活用するための5つのアイデア
  • 実家を積極的に運用して稼ぐ方法
について、具体的なノウハウを解説していきたいと思います。

「空いた実家をどう活用すれば良いかわからない・・・」とお悩みの方は、ぜひ最後までご覧ください!

空き家が社会問題化する実態

初めに、空き家が社会問題化している実態についてお話しします。

2018年時点で、日本には約6240万戸の住宅ストック(既存住宅)があります。

そして、世帯数は5400万世帯です。

図表1:住宅ストック数と世帯数の推移
図1

出所:「平成30年住宅・土地統計調査の集計結果(住宅及び世帯に関する基本集計)の概要」(国土交通省)

このデータから日本の既存住宅の空き家率を計算すると、約13.6%となります。

さらに、日本の既存住宅のうち、持ち家は6割です(総務省統計局「平成30年住宅及び世帯に関する基本集計」による)。

持ち家の空き家率は前回調査で約9.4%となっており、5年ごとの調査で毎回1%ずつ空き家率が上昇しています(図表2参照)。

図表2:持家・借家別の空き家率の推移
図1

出所:「平成30年住宅・土地統計調査の集計結果(住宅及び世帯に関する基本集計)の概要」(国土交通省)

以上のデータ、そして日本のさらなる高齢化を考えてみれば、持ち家の空室率はますます悪化していくことが予測されます。

全国の自治体が空き家の対処に頭を悩ませている

また、空室率の悪化に伴い、全国の自治体は放置される空き家の対処に頭を悩ませているという実態もあります。

たとえば、古家を放置させて老朽化が進めば、草木が生い茂って虫がわいたり、ゴミが溜まって悪臭を放ったりするなど、近隣住民に迷惑をかけることになってしまいます。

さらに、相続を受けた家がしっかりと相続人に移転登記されていない場合、自治体は誰に固定資産税を請求すれば良いのかわからないという問題も起きてしまうのです。

そのため、国は2015年に「空き家対策特別措置法」という法律を施行させました。

空き家対策特別措置法は、空き家の放置によって発生するさまざまなトラブルを解消し、空き家の活用や処分を後押しするための法律です。

この法律によって、相続した空き家をそのまま放置してしまうと、なんと平時の6倍の固定資産税が請求されることとなりました。

では、なぜ相続した空き家をそのまま放置してしまうと、平時の6倍の固定資産税が請求されるのでしょうか?

その理由を知るためには、空き家対策特別措置法が施行されるに至った経緯を知る必要があります。

空き家対策特別措置法が施行されるに至った経緯

まず、住宅が建っている土地というのは「住宅用地」という区分となり、固定資産税が6分の1に軽減されるという特例があります。

>そのため、相続した実家を「古いから」という理由だけで解体してしまうと「住宅用地」ではなくなってしまい、翌年の固定資産税が6倍になってしまうのです。

こうした理由から、固定資産税を抑えるために空き家を放置する人が続出し、誰も住んでいない空き家が増えてしまったのです。

そこで国は「空き家をそのまま放置したら更地と同じ扱いにするぞ!!」として、空き家対策特別措置法という法律を施行させたというわけですね。

こうした経緯から、相続した空き家をそのまま放置してしまうと平時の6倍の固定資産税が請求されるということになったのです。

国はこの法律を施行することによって、空き家の放置によって発生する様々なトラブルを解消しつつ、「空き家を放置しないでください」「空き家をしっかり活用してください」というメッセージを国民に伝えているということになります。

相続した実家を放置したらどうなってしまうのか?

では、それでも空き家を放置し続けた場合、どのような流れで6倍の固定資産税が請求されるに至るのでしょうか?

まず、自治体は空き家の調査をして、1年を通じて誰も住んでいない上に、ガスや水道すらも使用されていない物件を特定します。

そして、自治体はこうした物件を「特定空き家」として認定します。

その後、自治体は空き家の所有者に対し、「空き家をしっかり管理してください」という指導をします。

しかし、所有者がこの指導に従わなかった場合、住宅用地の特例が外されて、固定資産税が6倍になってしまいます。

さらに、自治体からの指導を一切無視して廃墟となった空き家をずっと放置してしまうと、最悪のケースでは行政代執行(注2)がなされ、行政が空き家を解体処分するという状況になってしまうこともあります。

その解体にかかった費用は所有者に対して請求されることになりますので、行政からの指導を無視することだけは絶対に避けるようにしましょう。

(注2)行政代執行とは:所有者に代わり、行政が適正管理に向けた取り組みを行うこと

無管理状態の特定空き家に指定されないためにやるべきこと

では、無管理状態の特定空き家に指定されないためにはどうしたら良いのでしょうか?

そのためには、庭に生えてくる植栽を刈り取ったり、ポストに投函されているチラシを掃除したりするなど、物件の管理を定期的に行う必要があります。

もちろん、実家が自宅のそばにあって定期的に管理できれば良いのですが、実家が遠くて管理しきれない場合もあると思います。

そのような場合は、空き家の管理サービスを提供している業者もありますので、そうしたサービスを活用してみるのも良いでしょう。

自治体によっては、倒壊の危険性がある古家の解体費用を補助してくれる場合もあります。

また、解体後一定期間において固定資産税をそのまま6分の1にしてくれるという自治体もあります。

このように、自治体によって制度は異なってきますので、自分の自治体にはどのような制度があるか一度確認しておくことをお勧めします。

いずれにせよ、引き継いだ実家を空き家のまま放置することだけはやめておいた方が良いということです。

空いた実家を有効活用する5つのアイデア

最後に、空いた実家を相続した場合にどのような活用アイデアがあるのか、その5つのアイデアについて具体的に解説していきたいと思います。

①過度なリフォームはせず、そのまま賃貸に出す

1つ目のアイデアは、過度なリフォームはせず、そのまま空き家を賃貸に出すという方法です。

過度なリフォームをしてしまうと高額な費用がかかってしまう上、リフォームをしたからといって入居者が決まるとも限らないので、もしも私が実家を引き継いだとしてら、リフォームはせずにそのまま賃貸に出すと思います。

とはいえ、都心の戸建てであればリフォーム無しでもそこそこの家賃を取れると思いますが、地方の古家の場合は高い賃料を取れる可能性は低いといえます。

そのため、地方の古家の場合は壁紙の張り替えやクリーニングなどの最低限のリフォームだけを行い、相場よりちょっと低めの家賃で貸し出すのが良いでしょう。

また、周りの物件と差別化ができるので、家具や家電に関してはそのまま残した状態で貸し出すのがお勧めです。

しかし、、そうはいっても実家が田舎にあるために借り手が見つからないというケースもあると思います。

そのような場合はどうすれば良いのでしょうか?

②空き家をタダで貸し出す

どうしても入居者がつかない場合は、タダでも良いので誰かしらに空き家を貸し出してしまう方が良いでしょう。

なぜタダでも貸し出してしまった方が良いのかというと、空き家の状態を放置しておくと自治体から指導を受ける可能性がありますし、管理を業者に任せるにしてもそれなりの費用が発生してしまうからです。

なにより、誰も住んでいなくとも毎年必ず一定額の固定資産税を支払わなければなりません。

そうであれば、タダ同然だったとしても誰かに住んでもらった方が良いというわけです。

家賃をタダにする代わりに固定資産税だけでも毎年借主に支払ってもらうようにすれば、空き家を維持するためのメンテナンスコストを浮かすこともできます。

さらに、誰かしらに住んでもらえれば、空き家は無管理状態ではなくなりますので行政からの指導もなく、家屋の痛みも抑えることができます。

③建て替えて売却する

3つ目のアイデアは、建て替えて売却するということです。

実家を相続したら、すぐに売却を検討するという方は少なくないと思います。

しかし、実際には相続した段階でその古家にはほとんど価値がなくなっているので、土地値のみで売却することになってしまうことが多いのです。

そうなると安く買い叩かれてしまうこともあるので、高く売るためには、古家を解体して新築に建て替え、新築一戸建てとして売却するのがお勧めです。

古家を解体して新築に建て替えることで建物に付加価値がつきますので、土地値+αの利益が出る可能性も高いでしょう。

ただし、新築に建て替えて売却益を出すにはそれなりのノウハウが必要です。

そのためには不動産実務検定のマスターレベルの知識を身につけておくことをオススメします。

④タダ同然で売却

4つ目のアイデアは、二束三文でも良いので売却してしまうことです。

実家を相続して最も最悪なのは、貸しもしないし売却もしないで放置するというケースです。

こうなると確実に建物は傷んできますし、自治体から指導を受けることにもなりかねません。

そして、固定資産税は6倍に跳ね上がってしまいます。

そのため、使い勝手が全くない実家であれば、二束三文になっても良いので売却してしまった方が良いでしょう。

⑤グループホームに転用する

最後のアイデアは、実家をグループホームに転用して活用することです。

私の会社では、古家を購入してリフォームして、障害者向けのグループホームを運営しています。

昔の家は4DKや5DKなど比較的広い家が多く、グループホームなどの間取りにぴったりなケースが多いのです。

もちろん、グループホームの運営には自治体の許可が必要ですし、世話人さんを何人も雇わねばなりません。

しかし、グループホームを運営することで、家賃だけではなく補助金もいただけるので、通常の賃貸とは比べ物にならないほどの収益を上げることが可能になります。

そのため、実家が比較的広い場合はグループホームの運営を視野に入れるのもいいでしょう。

ただし、グループホームの運営は本当に大変なので、誰にでもお勧めできる方法ではありません。

それでもグループホームの運営は社会貢献にもなりますし、収益も大きいので非常にやりがいのある事業です。

まとめ

実家を相続する可能性がある方は、誰でも大家さんになる可能性があるということです。

実家を相続することは面倒かもしれませんが、リスクゼロで大家さんになれるというのはかなりのメリットです。

不動産投資は少ない労力で大きな成果を上げることのできる唯一の投資法です。

しかし、不動産投資で成功するためには、不動産の知識のみならず、経済や金融の知識も欠かせません。

今後も不動産や経済、投資全般の情報を継続的にアップしていきますので、興味のある方はぜひ私の過去記事やYouTubeチャンネルをご覧いただければ幸いです。

ぜひ一緒に学びましょう。