ブログ

階段の崩落事故から考える、入居者様の安心と安全

公開日: 2021年08月01日

鉄部や外壁は定期的にチェックして事故を予防

少し前に、東京都八王子市にあるアパートの階段が崩落して住民が転落、亡くなられるという痛ましい事故がありました。

この物件は築8年の築浅の物件ということで、建設会社の施工に問題がなかったか業務上過失致死の疑いで警視庁の捜査が入りましたが、業者は自己破産を申請し逃げようとしています。

私は、これまで僅か8年で階段が崩落するという事故を聞いたことがありませんが、この物件は建築の完了検査も受けていたそうで、合法的に作られたようです。

では、事故の責任は誰にあるのでしょうか。

実は建設会社だけではなく、大家さんが責任を取る必要が生じるかも知れないのです。

そもそも、空室を埋めて満室経営を実現するには、入居者様が「安心・安全に暮らせる住まい」を提供しなければいけません。

これが、安定経営を実現するための根底といっても過言ではありません。

そこで今回は、このような事故を防ぐために「大家さんはどうすべきか」について、具体的に解説したいと思います。

大家さんの責任問題

前述のアパートは、設計士によれば、階段がすべて鉄骨で設計されていたにも関わらず「施工段階で踊り場の床が木製に変更されていた」そうです。

私は過去に何棟も鉄骨階段を見てきましたが、一般的に外階段は踊り場も含め、すべて鉄骨で作ります。

それなのに、踊り場だけ木製にしたのは、おそらくコストダウンのためだと思います。

もしも、大家さんがこの設計変更を「知らない」もしくは「認めていなければ」明らかに施工業者の契約違反です。

仮に施工時に不備がなかったとしても、法律で瑕疵担保保証が10年間義務付けられていますし、本来は鉄を使う場所に木材を使用していたわけですから、建設会社の責任は重いと考えられます。

しかし、この業者は破産申請をしているため、修繕工事ができませんし、今後は「社長個人を訴えるか」が争点になると思います。

さらに、ポイントになるのが「大家さんの責任問題」です。

築浅物件のため一見、責任がなさそうですが、実際はそうではありません。

このような場合でも、大家さんが責任を問われるケースがあります。

民法には土地工作物責任というのがあり、建物に問題があった場合は「所有者が損害を賠償する義務」が生じるからです。

ただし、前述のケースでは瑕疵がある点を大家さんが知らなかった可能性が高いため、責任の度合いは少ないと思います。

それでも「全くない」とは言えない状況で、これを「無過失責任」と呼びます。

損害賠償請求の流れ

それでは事故が起こった場合の損害賠償請求は、どのような流れになるのでしょうか。

一般的には、最初に被害者または遺族が大家さんに損害賠償請求をしてくると思います。

保険に加入していれば損害賠償も行えますが、入っていなければ自己負担です。

もしも、施工の問題で事故が起きたのであれば、次は大家さんから建設会社へ損害賠償請求を行います。

建設会社も基本的には生産物賠償責任保険、通称PL保険に入っているため、これで賠償を行います。

しかし、業者と経営者が自己破産すれば、大家さんに過失がなくても、大なり小なり責任を問われることは間違いありません。

だからこそ、物件の不具合は絶対に放置してはいけないのです。

最近は、鉄骨階段の崩落事故が多くなっていますから、鉄部の錆落としや再塗装などについて、必ずチェックするようにしてください。

ほかにも、コンクリートの庇が崩落し通行人に当たって怪我をする事故や、壁のタイルが剥がれ落ちるケースなども起きています。

基本的に鉄部の再塗装は5〜10年に一度は行うべきですし、外壁や庇の点検も10〜15年に一度は実施しましょう。

また、火災報知器の法定点検を怠るケースも少なくありません。

このような消防設備は消防法で点検が義務付けられています。

「費用をかけたくない」と無視する大家さんもいますが、事故が起きてからでは取り返しがつかないため、日頃からチェックするようにしましょう。

そしてリスクを避けるためにも、火災保険の特約として加入できる施設賠償責任保険にも入っておくべきです。

業者さんの選び方

最後に、業者さんの選び方についても触れておきます。

まずは、評判をネットで検索してみます。

悪い噂がある場合は要注意です。

次に、該当業者さんが以前施工した物件や工事中の物件などを確認します。

私の経験上、現場の整理整頓が悪かったり、現場監督の不在が多いケースは手抜きや施工不良の確率がアップします。

さらに、帝国データバンクで財務の内容をチェックするのも有効です。

とはいえ、小さい業者さんの場合はデータがないこともあります。

そんな時は「経営審査事項」を取り寄せます。

この資料は公共工事の入札をする際に必要な書類で、建設会社さんの売上高・利益資産・負債額・技術者の数などの経営情報が掲載されています。

取り寄せ方は簡単で、『一般財団法人建設業情報管理センター』のサイトで検索すれば、全国の業者さんの経営審査事項が調べられます。

公共工事をしていれば公表されているので、取り寄せてチェックしましょう。