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大家さんが見落としがちな高齢者入居の利点とは?

公開日: 2021年02月01日

リスクは年齢で図れない、大切なのは効果的な対策

私の所有物件では「高齢者だから」というだけで入居を拒否したことは一度もありません。

むしろ、積極的に受け入れています。理由は「リスクをしっかり把握して対策を取っている」からです。

ここを押さえられれば、高齢者ほど優良な入居者様はいないと思います。

しかも、国立社会保障・人口問題研究所が発表した最新の人口将来推計によれば、2040年には高齢世帯2242万世帯のうち、約40%の896万世帯が一人暮らしになると予測されています。

そのうち、賃貸世帯を40%と仮定すれば、およそ358万人が高齢者の入居者様になります。

ところが、(公財)日本賃貸住宅管理業協会の実態調査によると、大家さんが拒否感を示す入居者様の属性トップ3は、1位/障害者、2位/単身の高齢者、3位/外国人となっています。

理由は、近隣トラブルや滞納、さらに孤独死のリスクがあるからでしょう。

確かに、年金生活で収入が少なければ滞納のリスクが頭をよぎるのも分かります。

身寄りがいなければ、連帯保証人もつけられません。

最近は家賃滞納保証を利用するのも一般的になっていますが「高齢者というだけで審査に落ちてしまう」ケースも多々あり、実際に「民間の家賃滞納保証に入れない」高齢者は少なくありません。

ただし、孤独死のリスクで考えれば、すべての高齢者が該当するわけではありません。

むしろ、現在のようなコロナ禍が長引けば、経済的な問題や精神疾患などにより、若い方の自殺者も考えられると思います。

さらに、高齢者の場合は一度入居すると「退去が発生しにくい」というメリットがあリます。

例えば、高齢の入居者様を物件の清掃アルバイトなどで雇えば、収入面のサポートも可能かも知れません。

高齢者の入居におけるリスクヘッジ

次に、高齢者の入居におけるリスクヘッジの具体的な方法についても触れておきます。

先程「民間の滞納保証は高齢者というだけで審査に落ちてしまう」ことが多いと述べましたが、実は「公的な滞納保証制度」も存在しています。

これを利用すれば、高齢者でも家賃滞納保証に加入できます。

運営しているのは、(一財)高齢者住宅財団で、ほかにも障害者、母子家庭、外国人などの家賃債務も保証してくれま

す。ただし、対象になる住宅は「高齢者住宅財団と家賃債務保証制度の利用に関する基本約定を締結した賃貸住宅」でなければいけません。

とはいえ、現状で基本約定を結んでいなくても、高齢者から入居申込があった時点で同時並行で申請すれば問題ありません。

つまり「約定をしていないから利用できない」と考える必要はないわけです。

保証の対象については、高齢者世帯の場合は60歳以上の方、もしくは要介護・要支援認定を受けている60歳未満の方となります。

また、保証内容と限度額ですが、滞納の場合は月額家賃の最大12ヵ月分までとなります。

これに加え、原状回復及び訴訟費用として、月額家賃の最大9ヵ月分に相当する金額も保証されます。

注意点は、民間の家賃滞納保証と違い「前述の金額が保証されるのは退去する場合に限る」ということです。

入居者様が生活保護受給者になった場合

もしも将来、入居者様が生活保護受給者になっても、各自治体には住宅補助として家賃の支援制度があります。

扶助金額は地域や世帯人数によって異なりますが、毎月自治体から大家さんの口座に支払われるため、自動引き落としにすれば家賃を取り損なう心配もないと思います。

さらに、孤独死のリスクヘッジについては、防止策として民間や自治体の見守り制度を利用することが考えられます。

民間では、警備会社さんが提供する「高齢者サポートサービス」があります。

これはトイレや部屋にセンサーを設置して「動きがない場合に警備員が駆けつけるサービス」で、月額数千円程度で利用できるものもあります。

また、自治体の見守り制度については消防署への緊急通報装置を無償で貸与してくれる制度があったり、地域のスタッフが週に1回以上電話をかけたり訪問してくれたりする制度があります。

さらに、大家さんの対策として賃貸借契約時に「電話で安否確認の際、応答が無ければ管理者が部屋に入って確認する」という許諾を予めもらっておくのが良いと思います。

そして、「孤独死保険」への加入を必須にします。

以前、私が所有する物件で若い入居者様の孤独死が起きたのですが、保険に入っていたおかげで本当に助かりました。

現在は、保険料も比較的安価なプランが存在します。

あとは、高齢の入居者様とコミュニケーションを取ることも大切です。

コロナ禍で、今は人との直接な接触は嫌がられる傾向ですが、電話やメールなどを活用すればコミュニケーションを図ることはできます。

そして、何かあったらすぐに連絡が貰えるような、ご近所付き合いのお手伝いをするのも大家さんの務めだと思います。

入居者様同士が顔見知りになれば、そういう環境が生まれやすくなります。