ブログ

夜逃げに素早く対処して損失を最小限に抑えた事例

公開日: 2022年04月16日

正式な「念書」を作成し所轄の警察署に相談する

こんにちは!YouTuber ウラケン不動産です。

賃貸経営を行っていると、不測の事態が起きてしまうこともあります。

例えば、借主が突然消息不明になってしまう夜逃げなども、その一つです。

夜逃げをされると該当する借主の発見を始め、家財を処理するための法的手続きなども含めて完全解決までに1年近くかかるケースもあります。

その間は家賃収入が得られないため、夜逃げが発生したら可能な限り早く対応することがベストな空室対策といえるのです。

そこで、今回は僅か3週間で夜逃げの処理を終えた事例をご紹介しながら、早期解決のポイントについて解説していきたいと思います。

夜逃げを早期解決した事例

ある賃貸マンションの一室で、家賃の支払いが遅れるようになり、督促しても「返事がない」という状況が発生しました。

契約書上の賃借人は若い女性で、連帯保証人は父親でしたが、実態は親子が同居をしていたのです。

そこで、まずは解決方法を話し合うために賃借人の勤務先を探し出して、訪問面談。

「念書」を作り、支払いの約束を取りつけました。

ところが、期日になっても入金確認が取れません。

再度、部屋を訪問しても返事がないため慌てて勤務先に連絡すると、そこにも見当らず夜逃げが判明したのです。

このような状態に陥ったら、何から手をつけるべきでしょうか?

賃借人が夜逃げしたからといって、勝手に部屋へ立ち入り残置物の処分などを行うことはできません。

場合によっては不法侵入や窃盗などで、逆に訴えられるリスクさえあります。

そのため、基本的には夜逃げの処理は次のような手続きを踏まなければいけません。


賃貸借契約の解除

まずは賃貸借契約の解除が不可欠なのですが、夜逃げをする人は住民票の届出はしませんので行方を探す必要があります。

そこで近隣者を始め、親族や交友関係者、以前の住所地への聞き込みなどを行います。

以上のような徹底した調査を試みても居場所が判明しない場合には、裁判所へ「必死に探しましたが、見つかりませんでした」という内容の調査報告書を提出します。

これにより、裁判所などの掲示板に呼出状が張り出され、その日から2週間経過すると賃貸借契約解約の訴状が、賃借人に送達されたと見なされます。

この「公示送達」により、賃貸借契約が解除されるわけです。


残置物の処分

しかし、部屋の鍵を開けて残置物を処分するには「建物明渡し訴訟」や「未払賃料請求訴訟」を起こして、裁判所の判決を得なければなりません。

そして、司法の判決が下れば部屋に入る「強制執行」が可能となります。

とはいえ、残置動産は自らが競落し自己所有物として「賃料債権」回収名目で処分するか、後日の競売のため倉庫を借りて保管しておかなければなりません。

仮に賃貸借契約書に「残置物放棄条項」が載っていても、東京高裁の判決例などを考慮すると、賃貸人が直ちに残置動産を処分することは難しいと思われます。 

実際に、このような手続きをすべて踏んでいけば、解決するまでに1年程度は必要になるはずです。

夜逃げが明らかなのに、こんなに時間をかけていては損失は甚大となります。

そこで、前述した事例の大家さんは、所轄の警察署の生活安全部署に「念書」を持参して相談に行ったのです。

すると担当官が分厚い規範集を見ながら、慎重に検討してくれたそうです。

結論としては「最近、本人達が内容に承知して念書に署名&押印をしているのだから、大家さんが残置物を片付けても自力救済には該当しないでしょう」という話になったとのことです。

つまり、部屋に入って残置物を処分しても「刑法上の家屋侵入や窃盗にはならない」という判断をしてくれたわけです。

画像1を拡大表示

念書のポイント

この時に作成していた「念書」のポイントは次の5項目です。

①滞納している家賃を分割にて 支払う(期日と金額を明示)。

②滞納分の分割家賃と正規の賃料の遅滞が生じた時は、直ち に賃貸借契約を解約する。

③解約と同時に賃貸借住戸を速やかに明け渡す。

④住戸内に賃借人所有の動産等 残置物がある時は、貸主の責任で処分できる。この費用は賃借人の負担とする。

⑤本念書は原賃貸借契約を補完するものであり、この記載内容は原賃貸借契約書の記載内容に優先する。

なかでも、念書の⑤「この記載内容は原賃貸借契約書の記載内容に優先する」という一文が重要なポイントになりました。

この大家さんは警察署への相談の後、部屋を確認しに行ったのですが、予想通り室内は散らかり放題でした。

そこで、すぐに原状回復を行い、夜逃げ発覚から僅か3週間で入居募集を開始することに成功したのです。

ただし、この成功事例がすべての夜逃げのケースで当てはまるわけではありません。

全国各地の警察署の担当官の方が必ず同じ判断をするとは限りませんし、物件がある地域によっても状況は変わると思います。

あくまでも、この大家さんが当時成功した事例の一つにしか過ぎないのです。

とはいえ、事前に「念書」を取るなど様々な対策を施すことにより、素早く解決できる可能性は高くなります。
*注意=この事例は法律上の判断を示しているわけではありません。

あくまでも法律をよく学んだうえで、警察に相談するなど柔軟に対応することの大切さを知って頂くため、一つの例としてご紹介しています。