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3Dプリンター住宅は普及するのか?

公開日: 2022年12月02日

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こんにちは!YouTuber ウラケン不動産です。

今日は、最近話題になっている「3Dプリンター住宅」についてお話しします。

皆さん、「3Dプリンター」はご存じですよね?

パソコンのCADソフトを用いて部品を自由に設計し、フィギュアなどプラスティックの造形物を、まるで印刷するかのように簡単に作ることができる機械です。

この3Dプリンター、昔は値段が高かったのですが、近年はAmazonで3万円程のお手頃価格で購入もできるようになってきました。

そして最近では、「3Dプリンターの技術を活用して家を建てよう!」というベンチャー企業が登場しています。

また、ベンチャーのみならず、大手のゼネコン(大林組竹中工務店など)各社も、3Dプリンターを利用した住宅建築の研究を加速させています。

そこで今日は、「3Dプリンター住宅は普及するのか?」について、考えていきたいと思います。

 

3Dプリンター住宅の実態

まずは3Dプリンター住宅のイメージを掴むため、事例をいくつか紹介しましょう。

 

10平米の3Dプリンター住宅が、300万円で販売されている


2022年3月、兵庫のベンチャー企業が、10平米の家を23時間12分で完成したという記事がでました。この物件は300万円で販売されており、なんと初回販売6棟は既に完売しているそうです。

そして、2022年10月より、一般販売が開始されるそうです。

とはいえ、10平米というのは住むには狭いため、キャンプのグランピング用くらいにしか利用できないかもしれません。
 

2023年には、49平米の1LDK住宅が完成する予定


そして、上記の兵庫のベンチャー企業は現在、慶應義塾大学と共同開発を進めており、2023年には49平米の1LDKの住宅を完成させるとのこと。

先ほどの簡易的な住宅とは異なり、こちらは水回り、電気、トイレ、お風呂も完備されているとのことで、通常の住宅の形にグッと近づいています。

ちなみに、こちらの物件の本体価格は500万円とのことでした。この価格の捉え方については、後ほど言及します。
 

実際の作成動画も見てみました


3Dプリンターというと、プラスティックの造形物を機械の中で作るイメージがあります。

しかし、「住宅」の場合はどのように作るのでしょうか。実際に施工している動画があったので、僕も見てみました。

動画を見ると、ロボットアーム(車の製造ラインで溶接する手のようなロボット)の先端にノズルがついていて、ノズルからモルタル(コンクリート)が、にゅ~っと絞り出されています。

例えるなら、ケーキの上に生クリームを絞るようなイメージです。それを何層にも重ねて作っているんですね。

感想としては、「結構ちゃんと作ってるなぁ~」という印象を持ちました。

鉄筋を入れて、断熱材を入れてコンクリートで挟んで・・・という従来のRC造の住宅建設も3Dプリンターの技術で実現可能なんだ!と、実際に動画をみて実感しました。

 

3Dプリンター住宅のメリットは?

では、3Dプリンター住宅のメリットはなんなのでしょうか?最大のメリットは、建設コストを安く抑えられることだと僕は思っています。

ここ数年、住宅の建築費は非常に高騰しています。

まず、円安の影響もあって建築資材のコストが高騰しています。

加えて、大工、型枠工、鉄筋工などの職人さんは高齢化が進んでいることもあり、人数も少なくなっているので、職人さんの人件費も高騰しています。

しかし一方で、3Dプリンターを利用した住宅建設であれば、人件費はほとんどかかりません

必要なのは、3Dプリンターを設置する人件費と、CADで設計する人件費くらいです。

工期に関しても、ボタンを押してから1~3日程度で完成です。工期を短くできるというのも、3Dプリンターのもう1つのメリットですね。

 

とはいえ、法律やコスト面で課題が残る

一方で、3Dプリンター住宅の課題として挙げられるのは、

・建築基準法の課題
・コストの課題(基礎にいくらかかるのか)


です。

建築基準法上、面積が10平米を超えると法準拠のための建築確認申請が必要となり、耐震性や採光(窓の大きさ)などの規制が生じます。

こういった、建築基準法の課題をどう克服していくかが、3Dプリンター住宅普及の鍵となってくるでしょう。

とはいえ、このあたりは技術の進歩によってコストが下がる可能性も高いです。技術が発達し、需要が広がればコストは下がる、と僕は考えています。
 

※販売価格の捉え方には要注意


ただし、3Dプリンター住宅の販売価格の捉え方には注意が必要です。

先程ご紹介した物件価格500万円の3Dプリンター住宅を例に挙げると、この価格には基礎や給排水の配管工事費などは含まれていないでしょう。もっと言えば、内装の価格も含まれているかどうか不明です。

ですので、500万円の3Dプリンター住宅の引渡し価格は、なんやかんやで1,000万円くらいになるのではないか?と僕は予想しています。

ちなみに、僕は10年以上前に、65平米の2LDKの木造住宅を700万円台で作っていましたが、基礎工事などを含めると、結局900万円くらいに落ち着いていました。

そのため、本体価格500万円の販売価格をみて、高い安いと判断するのは、建築専門家から言えばナンセンスなんですよね。

3Dプリンター住宅を普及させるには、そのあたりをカバーしてもなお、「これは安い!」と思える本体価格になってこないといけないと思います。

 

時代の流れに伴い、3Dプリンター住宅は新たな選択肢として普及する

では最後に、3Dプリンター住宅が普及するかどうか?を考えてみましょう。

3Dプリンターで家を作る、というのは、車でいうところの電気自動車に近いと僕は捉えています。

そのため、将来的には電気自動車のように、1つの選択肢として少なからず普及するのではないかと思っています。

電気自動車も昔は、

・航続距離が短かったり
・充電設備が足りなかったり
・本体価格が高かったり

ということがありました。

ところが10年以上も経つと、充電環境も整備され、世界的な環境保全の流れもあり、電気自動車はどんどん増えています。時代の流れには抗えません。

僕個人としてはガソリン車(特にレーシングカー)が好きなので、EV車に乗ろうとは今のところ思ってはいませんが、10年後は乗っている可能性もありますね。

レコードがCDになり、MDになり、そしてSpotifyになったのと同じように、建築においても、3Dプリンターが次世代の建築の形になるかもしれません。

 

まとめ

というわけで今回は、「3Dプリンター住宅は普及するのか?」について考えてみました。

3Dプリンター住宅の動向については、しばらく注視していきたいですね。

事例で紹介した住宅モデルが来年完成するそうなので、機会があれば見てみたいと思っています!

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