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3600万円の初競一番マグロは儲かる?費用対効果を考えてみよう!

公開日: 2023年01月29日

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こんにちは!YouTuber ウラケン不動産です。

先日、社内の新年会で銀座の「おのでら」というお寿司屋さんに行ってきました。

毎年、豊洲市場の初競りで誰が一番マグロを落札するのか?ということは、お正月の風物詩として大きな話題になっていますが、今年その一番マグロを落札したのが、この「おのでら」さんを運営するONODERAグループです。

落札されたマグロは212キロの大間の本マグロで、落札額は1キロあたり17万円、総額3,604万円でした。

一番マグロの落札額は毎年せり上がっていて、史上最高値は数年前の「すしざんまい」を展開する喜代村さんの落札で、3億円を超えていたと思います。

一番マグロは例年200キロくらいで、このマグロからどのくらいのお寿司がとれるかというと、だいたい8,000貫だそうです。

一貫1,000円で提供したとしても売上は800万円ですので、800万円以上で仕入れたら全く利益が出ないわけです。

通常は、大間の本マグロであっても1キロあたり1万円くらいで、高値がついて1万5,000円くらいになっています。つまり、だいたい一匹200万円くらいで、高値がつくと300万円くらいというイメージです。

加工代や場所代、人件費などを考えると、200~300万円で仕入れて、800万円くらいの売上があって、やっと採算が合うという感じでしょう。

史上最高値が3億円なので、3,600万円であれば「安い!」と思われるかもしれませんが、お寿司屋さんにとっては大赤字になっています。

 

初競りに参加できるのは、一定の販路を持つ者だけ

初競りというのは、みんなが縁起物として注目していますし、さまざまな仲卸やすしざんまいさんみたいなチェーン店が狙っています。

仲買人がこの初競りに参加するためには、確実にそのマグロを買い取ってくれるお店がいなければなりません。

ですので、何十店舗も展開している大手スーパーの仕入れ担当者や、チェーン店を経営しているすしざんまいさんなどが参加します。

今回落札したONODERAグループも、銀座のカウンターのお寿司だけでなく、回転寿司や立ち食い寿司店などを運営していて、上海やハワイ、ロサンゼルス、ニューヨークにもお店があります。全世界に販路があるので、入札に参加できるわけですね。

つまり、この一番マグロを狙えるのは限られたお店だけということになります。

一方、通常のこぢんまりとしたお寿司屋さんは、そんなに多くのマグロを使わないため、当然一番マグロを仕入れられません。

こういった小規模のお寿司屋さんは、マグロの仲卸業者さんからブロックで仕入れることが多いようです。有名どころでいうと、豊洲の「やま幸」さんとかですね。

 

なぜ赤字でも落札するのか?そのカラクリ

先ほども言ったように、通常は一匹300万円くらいでないと採算が合わず、大赤字になってしまいます。

しかし、実は3,604万円になっても、ちゃんと採算が合うようになっているのです。

なぜなら、この豊洲のマグロの初競りは縁起もので風物詩であり、誰がいくらで一番マグロを落札するのか?ということは、大きな話題になるからです。

テレビ各局もみんな取材に来ていますから、一番マグロを掴めば、朝・昼・晩とキー局から地方局まで大々的にテレビで放送されます。

一説によると、この広告効果が10億円以上といわれています。

例えば、すしざんまいが何千万と何億円とかでマグロを仕入れたとします。

そして、すしざんまいの店舗で「一番マグロを出します!」となれば、行列ができ、それがテレビなどで放送されることにより、すごい宣伝効果があるわけです。

また、今まですしざんまいに行ったことがなかった人も、「縁起物を食べに行こう!」となるので、実際にお客さんをお店に運んでくれるという集客効果もものすごくあります

最近は、すしざんまいの社長さんもそんなに頑張らないようになってきたらしく、ここ数年はだいたい数千万円台に落ち着いてきたので、おのでらの大将もやりやすくなってきたそうです。

 

ONODERAの海外展開から見える企業戦略

ところで、このお寿司屋さん「おのでら」の母体は給食などの配膳業の巨大企業です。その一部門としてお寿司屋さんがあり、本格的な銀座のお寿司を提供しています。

おのでらの店舗に行くと、掛け軸がかかっていて、そこには「銀座から世界へ」と書かれています。そのコンセプトどおり、ONODERAグループは10年以上前から、どんどん海外に出店をしてきています

パリや香港、上海、ハワイなど、世界中に店舗を構えていて、ニューヨーク店とロサンゼルス店はミシュランの星を獲得しています。

では、なぜ寿司屋の何十倍、何百倍という売上を上げる母体があるにもかかわらず、このような事業を展開しているのでしょうか

それは、日本の「寿司」という世界共通言語を使って、世界中に店舗を展開してトップを取っていくことによって、例えば、アメリカやヨーロッパのセレブがお店に来ることになります。そうすると、将来的に配膳業を世界展開する時に、「あのお寿司の『おのでら』の母体なのね」と説明がいらなくなるのです。

例えば、ホリエモンがやっている「和牛マフィア」というお店には海外のセレブが来るようですが、それも同じことで、ベッカムやアラブの王様が来て、するとそれが名刺代わりになって、世界とのネットワークが広がっていくという考え方です。

おのでらが普通のお寿司屋さんと違うのは、世界を見据え、ブランドとして全面に打ち出して、後々の戦略までしっかり描いている点です。これは本当に凄いなと思います。

このような目線で、「あの企業はどうして海外に進出しているのか?」ということを考えてみるのも、ビジネス的には勉強になるのではないかと思います。

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