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タリーズに学ぶ満室経営(前編)

公開日: 2023年05月01日

こんにちは!YouTuber ウラケン不動産です。

5月に入り、まだ満室になっていない!という大家さんは焦っているかもしれませんね。

しかし、例年ゴールデンウィーク明けまでは、旬の勢いが続きます。あきらめず頑張っていきましょう。

さて、今回は前々から尊敬している松田公太さんの講演を聞いた時のお話を前編と後編に分けてお伝えします。

松田さんは、ご存知、タリーズコーヒーの創業者であり、参議院議員としても活躍されていました。

彼は68年生まれで、私より1つ年上ですが、やはり死ぬほど考えて、死ぬほど行動してきた人は、強く綺麗なオーラをまとっていますね。

松田さんは、97年、28歳の時にシアトルでタリーズコーヒーに出会い、スターバックスより先に、日本でスペシャリティーコーヒーチェーンを展開していくことになるのですが、その店舗展開の様子が、めちゃくちゃ大家業にも参考になってしまうのです。

そこで、今回は松田さんの講演内容を参考に、不動産投資家、大家さんとして共通する戦略について考えていきたいと思います。

 

これだと思ったら猛烈アタック

日本でのタリーズコーヒーの歴史は、一杯のコーヒーとの出会いから始まります。

96年、旧三和銀行の行員だった松田さんは、渡米中にシアトルで飲んだタリーズコーヒーの味に感動。

なんとか日本でスペシャリティーコーヒーの店舗展開をさせてもらえないかと、創業者のトム・タリー・オーキフに直談判したのが始まりでした。

当時、日本のコーヒーチェーンというとドトールやヴェローチェなどの格安喫茶店が主流で、老舗の喫茶店のような味わい深いスペシャリティーコーヒーを出すチェーン店はありませんでした

もちろんスターバックスも当時はまだ日本進出を果たしていません。

「一杯300円以上もするコーヒーなど売れるはずがない」周囲の人はみんなこう口をそろえたそうです。

しかし、松田さんは「ぜったいいける」と確信し、創業者のトムに直談判をするのです。

ところが、直談判しようにも、一介のサラリーマンだった松田さんにコネなどは全くありません。

考えられる連絡手段は、電話とメールだけでした。にもかかわらず、限られた手段を利用して何度もアプローチ。

約1年後、最後にはトムが根負けし、「1年でダメだったら撤退」という条件付きで出店をOKされたといいます。

そういえば、高校生だった孫正義さんが、「金儲けのカリスマ」を崇められていた日本マクドナルドの創業者藤田田さんに会いにいったエピソードも、同じような感じの直談判でしたね。

誰よりも熱いハートを持ってさえいれば、想いは必ず伝わるものなのですね。
 

~タリーズの教えその1~
まだ誰もいないところ(未開拓分野)で勝負する

~タリーズの教えその2~
コレだ!と思ったら、徹底的にアプローチする

 

徹底的なリサーチをする

なんとか交渉を続け、無事出店を許可されますが、次は1号店出店のための資金作りと物件探し

飲食業も大家業も立地(物件)はとても大事ですし、その物件を購入するための資金作りも重要です。

日本初のスペシャリティーコーヒーを出す店舗です。

失敗すれば1年で撤退というのが条件ですから、その物件の立地自体がブランド発信力をもつことはもちろん、集客力としても最高の場所が必要でした。

物件探しを初めて数ヶ月後、銀座の古いビルの1階に物件がでそうだという情報が入ります。

ところが、その店舗はまだビルのオーナーが喫茶店を経営しており、貸し出すかどうか未確定。

まだ仲介サイドで交渉を続ける必要があったため、松田さんが家主と直接接触することは固く禁じられてしまいました。

しかし、最高の立地がやっとみつかったのです。松田さんはいてもたってもいられません。

毎朝、晴海通りを挟んで対面にある喫茶店の窓際に陣取り、その店の前を行き交う人を朝から晩まで毎日チェックすることにしました。いわゆる交通量調査です。

毎朝1杯のコーヒーを注文し、終日、性別、年齢層別にノートに正の字を書いてチェックしていきました。

さらに、並びにあったマクドナルドや、大手喫茶チェーンのヴェローチェに入っていく人の数も全てカウントしていったそうです。

マクドナルドに入っていく人は1日約700人。1人あたりの単価が500円前後として、1日の売上げが35万円、月に約1000万円の売上げです。

松田さんは、ここでタリーズをオープンできたとしたら、マクドナルドの6~7割、1日400人のお客は入るだろうと予測します。

1日の売上げが20万円として、店舗の家賃、人件費、材料費、本部へのロイヤリティーを考えると、約600万円/月の売上げが採算ラインと踏んでいきました。こんな調査の毎日を1ヶ月も続けていきました。

そうこうしていると、ある日、ビルのオーナーと遭遇。直接交渉は業者に禁じられていたにもかかわらず、思わず直談判

コネもお金もなかった松田さんの熱意が通じ、無事、物件を貸してもらえるようになったのです。

 

アナログ情報に勝る情報はなし

いやー、凄い行動力ですね。

あなたが、コレだ!といった物件探しをする時、ここまでのリサーチをしているでしょうか?また、空室対策を講じる前に、ライバル物件の稼働率や契約条件などをリサーチしているでしょうか?

「木をみて森を見ず」という言葉がありますが、やはり商売を行う以上、自分の商品に競争力を持たせなければなりません。競争力は、ライバルがいて初めて競争力を持つのです。

したがって、そのライバルがどのような物件(商品)を提供しているのか、採算はあっているのか?などを調査するのは、飲食業も賃貸経営も同じ。必ずリサーチする必要があるのです。

僕の知り合いのAさんは埼玉県の北部でアパートを経営する大家さんですが、不動産投資を始める際、気になる投資エリアを「都心」「地方」にわけて検討していきました。その際に行ったのがエリアマーケティングです。

検討エリアに売り物件が出ると、彼はその物件の半径500m~1km圏内にあるアパートを片っ端から歩いて調査してしまう強者です。

具体的な調査方法は超アナログ。外から部屋をのぞいて、空室かどうかを確認するだけ

最近は空室でもカーテンがかかっていることがあるので、そんなときは、電気メーターの稼働状況で空室かどうかを判断するそうです。

こうして歩いて調査した生の空室情報は、賃貸情報サイトにはでてきません。

実は、このように実際に歩いて調査をすると、人気が高いエリアが実は供給が多く空室率が高いエリアだったり、不人気と思われていたエリアがむしろ稼働率が高いということを発見できるのです。

また、稼働率の調査と同時に、ライバル物件の特徴や募集状況も把握することができますし、管理会社の種類や、管理会社の管理状況なども把握できますので、物件購入後の管理、募集戦略も立てやすくなるというメリットもあるのです。

Aさんは、こうしてかかとをすり減らしつつ調査を行い、物件探しをした結果、埼玉県北部にお宝物件を手に入れます。

当初探していた都心の人気エリアの空室率は20%。しかし、埼玉北部の田舎にある某エリアの空室率はわずか5%未満!

高稼働エリアであった理由は近くに大学があったからでした。

その結果、Aさんは都心よりも安く利回りの高いお宝物件を手に入れることができたのです。

そういえば、私も、札幌郊外でアパートの企画コンサルをしたとき、やはり1日かけて町を歩き回り、近くの大学生をつかまえては、「どんなところに、いくらで住んでいるのか」、「あったら嬉しい設備って何?」などと、片っ端から調査していたことを思い出します。

05年に戸建賃貸を思いついた時も、実際に自ら6000世帯にアンケートをしたからこそ、戸建賃貸のニーズを確信でき、現在の戸建賃貸事業を軌道に乗せることができたと思っています。

このように、何かをする前に、今、あなたの物件がおかれている状況周りのライバルを調査するのはとーーっても重要。周りを見ることで、今、あなたの物件に必要な対策方法が浮かび上がるのです。

~タリーズの教えその3~
何かをする前に、徹底的に調査をする

 

できる人と仕事をする

話を戻しましょう。

松田さんは、紆余曲折ありながらも、無事、銀座4丁目の物件を賃借できることになりますが、問題は資金の調達でした。

当時、松田さんには500万円ほどの貯金があったそうですが、場所が場所だけに、店舗の保証金だけでも3000万円必要。さらに店の改装費を含め、開店までに4000万円が必要だったそうです。

3000万円はご両親や知り合いに借りつつ調達しますが、どうしてもあと4000万円足りません。

そこで松田さんは中小企業金融公庫に融資の相談にいきます。

本来なら、窓口にいっていきなり「お金を貸してほしい」という人が多いと思いますが、松田さんはいきなり融資を申込むことはしませんでした。

なんと、公庫訪問初日は、1日中、行員の動きをチェックしていたそうです。

どの行員の仕事ぶりが一番良いか?を観察し、その行員をつかまえて、「ぜひ私の担当になってください」と直談判したそうです。もちろん、詳細な事業計画書も用意した上で。

この辺は、さすがに元銀行員ですね。用意周到です。

過去、私も融資を受ける際は、必ず支店長、もしくは副支店長クラスに打診していましたし、仕事ができる人を巻き込むことは、ビジネスの成功には不可欠です。

さて、できる行員に担当になってもらった松田さんですが、まだビジネスをしたことはなく、公庫からの信用はゼロ。

そこで、融資を確実にするために、担当行員を物件視察に連れ出し、収益性が高い事業だということを証明する計画をもくろみます。

行員からは、仕事が終わるアフター5に見に行こうという提案をうけますが、松田さんは「平日は忙しい」と切り返し、あえて日曜日の視察をセットします。

実は、日曜日の銀座は歩行者天国になり、平日よりもすごい人通りになるのを松田さんはわかっていたのです。だから、あえて日曜日の視察をセットしたわけです。

実際、担当行員はありえない数の人並みを目の当たりにし、事業性をバッチリPRできたといいます。

おかげで無事、公庫から融資を受けることができるようになりました。

これ、賃貸経営も同じですね。どんなに大きな管理会社でも、会社はもちろん担当者の能力が低いと、空室対策も思うようにいきません。同等以上の知識レベル、常に変化していく環境に対応できる柔軟な頭の持ち主と一緒に仕事をすることが成功の秘訣なのです。

~タリーズの教えその4~
できる人と仕事をする!

話が長くなりますので、今回はここまでにします。続きは次回の後編をご覧ください。


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