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一家のための家族信託の話(前編)
公開日: 2023年05月22日
こんにちは!YouTuber ウラケン不動産です。
資産のある人、資産を増やした人が将来必ず直面する問題、それは「相続」です。
相続には、相続税の他に、事業承継を含む、相続人への分割問題もあります。
そこで今回は、この問題に万能な「家族信託」の話をしようと思います。
これから資産形成をしていく、という人には関係のない話かもしれませんが、今資産が1億円以上ある人は割と真剣に考えて欲しい知識です。
それ以下の資産規模の人でも、いずれ資産が増えれば必要になる知識なので、予備知識として理解しておくに越したことはありません。
将来の相続税の節税のために、アパマン等の新築などで節税を検討する人は増えましたが、一方で、相続対策が絶対に必要なレベルなのに「何もしない資産家」もいます。
一見、将来の相続税の負担に腹をくくっているように見えてちょっとカッコいい感じがしますが(笑)、果たして本当に何もしなくていいのでしょうか?
「ある程度の相続税の支払いは仕方ない。そのために納税資金も蓄えているし、相続人となる子供達の遺産分割も遺言書をつくってあるから大丈夫」と、しっかり相続税のことを勉強し、ある程度の相続税の支払いに腹をくくっているのなら、私からアドバイスすることは何もありません。
しかし、単に「何も考えていない」のであれば、それは大問題です。
「何も考えてない」の何が大問題になるのか?
「俺の目の黒いうちは、何もしない。借金もしないし、アパートも建てない」
相続対策が必要な地主さんでも、こういう頑なな人は少なくないような気がしますが、残された家族は、近い将来、確実に大変な目に遭うことになります。
例えば、土地建物だけで3億円の資産がある家庭があったとしましょう。
配偶者はなく、子2人が相続人になるとすると、将来払うことになる相続税は、合計で5,800万円にもなります(小規模宅地の特例は考慮しない)。
もし、現預金がなかったとすると、土地建物を売って納税しなければなりません。大変ですね。
また、相続対策をしようとは思っていても、「もう少し後で・・・」と対策が先延ばしになっていると、手遅れになるケースもあります。
例えば、親が認知症になってしまって、判断能力が著しく低下。
やろうやろうと思っていた、土地活用をからめた相続対策が突然できなくなってしまった、というケースもあります。
相続対策とは、親が元気なうちに対策をたてておく必要があるにもかかわらず、認知症の症状がでて初めて、いざ対策の必要が差し迫ったと感じた時に、対策しようと思っても手遅れになってしまうことが多いのです。
また、仮に現在、相続対策として、アパートの新築を企画中だったとしましょう。
ところが請負契約の前や、ローンの契約前に突然、親が認知症になってしまったらどうなるでしょう。
当然、契約行為はできなくなってしまうので、計画自体が頓挫してしまいますね。
認知症になってしまった後は、成年後見制度を活用して、後見人となる子供などが親の財産を管理することになります。
しかし、現在の成年後見制度では、たとえ相続対策であっても、親の財産を積極的に運用、活用することはできないのです。
成年後見制度では結局何もできない
認知症対策として、現在でも成年後見制度があります。
成年後見制度には2つの制度があり、親が行為不能力になってから行う「法定後見」と、親と子が事前に契約して裁判所が後見人を選任する「任意後見」があります。
法定後見は、親が行為不能力になってから親族が裁判所に申し立てを行い、裁判所が後見人を選任、監督をするため、できる行為がかなり制限されてしまいます。
具体的には、認知症の親の財産を管理するだけで、アパートを建てたり、物件を購入したり、処分したり、相続対策としての生命保険に加入したりするなど、具体的な相続対策を講じることはできません。
任意後見は、事前の契約に基づき、財産の運用、処分ができるとはいえ、この制度の趣旨を鑑みると、相続対策としての積極な資産運用は控えるべきと捉える方が自然でしょう。
ちなみに、成年後見制度でできることは「財産管理」と「身上監護」の2つ。
財産管理とはいえ、その財産を積極的に運用することはできません。
基本的には、今ある財産の収入、支出の管理、税務処理だけ。
一方、身上監護は、生活、療養看護に関するサポートが基本です。
さらに、家庭裁判所への報告義務もあり、当然、裁判所が禁止する行為は行うことができません。
つまり、相続対策として資産を積極的に運用することなど、もっての他なのです。⇒資料1参照
家族信託なら何でもできる
この点、家族信託なら、委託者(親)の資産を受託者(子など)が自由に管理運用することができるようになります。
つまり、将来、親が認知症になっても、信託契約を元に、受託者となる子供などが自由に親の資産を運用したり、相続対策を行うことができるようになるのです。
ここで、「信託」について少し整理しておきましょう。
「信託」は大きく2つに分類されます。
1つは「商事信託」といい、信託銀行のように、受託者が信託報酬を得るために業務として行う信託で、信託行法の制約の下で運用されます。
もう1つは「民事信託」といい、前者とは別に、受託者が信託報酬を得ないで行う信託(=非営利信託)なので、信託業法の制限を受けません。したがって、受託者は、個人でも法人でも誰でもなることができるのです。
つまり「民事信託」とは、信託銀行などが行うべきものではなく、私たち一般の人が「財産管理の一手法」として利用できる仕組みなのです。
この「民事信託」の中でも、財産管理を「信じて託す」のは自分の家族・親族であることが多いので、家族・親族を受託者として財産を任せる仕組みを「家族信託」と呼んでいるわけです。
この家族信託では、委託者の資産を、受託者は信託契約に基づき、何でも行うことができます。
例えば、土地を信託したら、「土地の所有権」は、信託を原因として、委託者(親)から受託者(子など)に移転します。
受託者は、信託契約により、その所有権を取得した信託財産について、信託契約で定められた財産の管理、処分等を行うことになります。⇒資料2参照
なんだか難しいですねぇ(笑)
要は、老親が認知症になったら、相続税対策ができなくなる。
だから老親が認知症になった後でも、不動産の管理、買い替え、アパートの建替え、収益物件の購入など、柔軟な資産運用や管理、組み替え、処分ができるよう、あらかじめ家族信託をしておくことがとても有効だというわけなのです。
実務的には、家族信託契約を行なったら、土地の名義は、受託者名義(子供などの名義)になります。
ちなみに、信託契約(信託登記)に基づく形式的な所有権移転になりますから、譲渡所得税も不動産取得税もかかりません。(登記のための登録免許税はかかります)
さらに、信託契約に記載があれば、受託者名義(子供などの名義)で借入れをおこして、アパートを新築することもできるのです。
しかし、相続税法上は、新築したアパートとローンは委託者(親)の資産、負債になり、相続税の節税につながることになるわけです。
当然ながら、ローンについては、受託者(子供などの名義)が返済義務を負うことになります。
家族信託は自益信託にしよう
さて、「俺の目の黒いうちは、何もしねぇ」という頑なで頑固な老親でも、認知症になったら、あとは子供である自分たちに任せてもらえるようなんとか説得して、「家族信託」だけはしてもらうことがとても重要であることが理解できたのではないでしょうか?
老親が認知症になったあと、どれだけ残された時間があるかはわかりませんが、家族信託さえしておけば、委託をうけた子供が、相続対策を講じることができるようになるのです。
ちなみに、認知症対策としての家族信託では、必ず「自益信託」とするのが基本です。というのも、贈与税を回避しなければならないからです。
自益信託とは、委託者と受益者が同じということ。
受益者というのは、委託者(親)が受託者(子供など)に託した財産から生まれる利益を受け取る人のことです。
例えば、アパートの賃料などを受け取る権利は、委託者(親)が持つようにしなければなりません。
もし受託者(子)がそのまま利益を受け取る権利(受益権)も得るとすれば、そこに贈与税がかかることになってしまうからです。
あくまで家族信託では、本来、親が自分でアパートを新築して相続対策を行うべきところを、信託契約に基づき、子供が親に変わって相続対策をしているだけですね。
ですから、そこから生まれる利益は親が受け取るべきものなのです。
さて、話が長くなりますので、「家族信託のメリット・デメリット」につきましては、次回の後編をご覧ください。
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資産のある人、資産を増やした人が将来必ず直面する問題、それは「相続」です。
相続には、相続税の他に、事業承継を含む、相続人への分割問題もあります。
そこで今回は、この問題に万能な「家族信託」の話をしようと思います。
これから資産形成をしていく、という人には関係のない話かもしれませんが、今資産が1億円以上ある人は割と真剣に考えて欲しい知識です。
それ以下の資産規模の人でも、いずれ資産が増えれば必要になる知識なので、予備知識として理解しておくに越したことはありません。
将来の相続税の節税のために、アパマン等の新築などで節税を検討する人は増えましたが、一方で、相続対策が絶対に必要なレベルなのに「何もしない資産家」もいます。
一見、将来の相続税の負担に腹をくくっているように見えてちょっとカッコいい感じがしますが(笑)、果たして本当に何もしなくていいのでしょうか?
「ある程度の相続税の支払いは仕方ない。そのために納税資金も蓄えているし、相続人となる子供達の遺産分割も遺言書をつくってあるから大丈夫」と、しっかり相続税のことを勉強し、ある程度の相続税の支払いに腹をくくっているのなら、私からアドバイスすることは何もありません。
しかし、単に「何も考えていない」のであれば、それは大問題です。
「何も考えてない」の何が大問題になるのか?
「俺の目の黒いうちは、何もしない。借金もしないし、アパートも建てない」相続対策が必要な地主さんでも、こういう頑なな人は少なくないような気がしますが、残された家族は、近い将来、確実に大変な目に遭うことになります。
例えば、土地建物だけで3億円の資産がある家庭があったとしましょう。
配偶者はなく、子2人が相続人になるとすると、将来払うことになる相続税は、合計で5,800万円にもなります(小規模宅地の特例は考慮しない)。
もし、現預金がなかったとすると、土地建物を売って納税しなければなりません。大変ですね。
また、相続対策をしようとは思っていても、「もう少し後で・・・」と対策が先延ばしになっていると、手遅れになるケースもあります。
例えば、親が認知症になってしまって、判断能力が著しく低下。
やろうやろうと思っていた、土地活用をからめた相続対策が突然できなくなってしまった、というケースもあります。
相続対策とは、親が元気なうちに対策をたてておく必要があるにもかかわらず、認知症の症状がでて初めて、いざ対策の必要が差し迫ったと感じた時に、対策しようと思っても手遅れになってしまうことが多いのです。
また、仮に現在、相続対策として、アパートの新築を企画中だったとしましょう。
ところが請負契約の前や、ローンの契約前に突然、親が認知症になってしまったらどうなるでしょう。
当然、契約行為はできなくなってしまうので、計画自体が頓挫してしまいますね。
認知症になってしまった後は、成年後見制度を活用して、後見人となる子供などが親の財産を管理することになります。
しかし、現在の成年後見制度では、たとえ相続対策であっても、親の財産を積極的に運用、活用することはできないのです。
成年後見制度では結局何もできない
認知症対策として、現在でも成年後見制度があります。成年後見制度には2つの制度があり、親が行為不能力になってから行う「法定後見」と、親と子が事前に契約して裁判所が後見人を選任する「任意後見」があります。
法定後見は、親が行為不能力になってから親族が裁判所に申し立てを行い、裁判所が後見人を選任、監督をするため、できる行為がかなり制限されてしまいます。
具体的には、認知症の親の財産を管理するだけで、アパートを建てたり、物件を購入したり、処分したり、相続対策としての生命保険に加入したりするなど、具体的な相続対策を講じることはできません。
任意後見は、事前の契約に基づき、財産の運用、処分ができるとはいえ、この制度の趣旨を鑑みると、相続対策としての積極な資産運用は控えるべきと捉える方が自然でしょう。
ちなみに、成年後見制度でできることは「財産管理」と「身上監護」の2つ。
財産管理とはいえ、その財産を積極的に運用することはできません。
基本的には、今ある財産の収入、支出の管理、税務処理だけ。
一方、身上監護は、生活、療養看護に関するサポートが基本です。
さらに、家庭裁判所への報告義務もあり、当然、裁判所が禁止する行為は行うことができません。
つまり、相続対策として資産を積極的に運用することなど、もっての他なのです。⇒資料1参照
家族信託なら何でもできる
この点、家族信託なら、委託者(親)の資産を受託者(子など)が自由に管理運用することができるようになります。つまり、将来、親が認知症になっても、信託契約を元に、受託者となる子供などが自由に親の資産を運用したり、相続対策を行うことができるようになるのです。
ここで、「信託」について少し整理しておきましょう。
「信託」は大きく2つに分類されます。
1つは「商事信託」といい、信託銀行のように、受託者が信託報酬を得るために業務として行う信託で、信託行法の制約の下で運用されます。
もう1つは「民事信託」といい、前者とは別に、受託者が信託報酬を得ないで行う信託(=非営利信託)なので、信託業法の制限を受けません。したがって、受託者は、個人でも法人でも誰でもなることができるのです。
つまり「民事信託」とは、信託銀行などが行うべきものではなく、私たち一般の人が「財産管理の一手法」として利用できる仕組みなのです。
この「民事信託」の中でも、財産管理を「信じて託す」のは自分の家族・親族であることが多いので、家族・親族を受託者として財産を任せる仕組みを「家族信託」と呼んでいるわけです。
この家族信託では、委託者の資産を、受託者は信託契約に基づき、何でも行うことができます。
例えば、土地を信託したら、「土地の所有権」は、信託を原因として、委託者(親)から受託者(子など)に移転します。
受託者は、信託契約により、その所有権を取得した信託財産について、信託契約で定められた財産の管理、処分等を行うことになります。⇒資料2参照
なんだか難しいですねぇ(笑)
要は、老親が認知症になったら、相続税対策ができなくなる。
だから老親が認知症になった後でも、不動産の管理、買い替え、アパートの建替え、収益物件の購入など、柔軟な資産運用や管理、組み替え、処分ができるよう、あらかじめ家族信託をしておくことがとても有効だというわけなのです。
実務的には、家族信託契約を行なったら、土地の名義は、受託者名義(子供などの名義)になります。
ちなみに、信託契約(信託登記)に基づく形式的な所有権移転になりますから、譲渡所得税も不動産取得税もかかりません。(登記のための登録免許税はかかります)
さらに、信託契約に記載があれば、受託者名義(子供などの名義)で借入れをおこして、アパートを新築することもできるのです。
しかし、相続税法上は、新築したアパートとローンは委託者(親)の資産、負債になり、相続税の節税につながることになるわけです。
当然ながら、ローンについては、受託者(子供などの名義)が返済義務を負うことになります。
家族信託は自益信託にしよう
さて、「俺の目の黒いうちは、何もしねぇ」という頑なで頑固な老親でも、認知症になったら、あとは子供である自分たちに任せてもらえるようなんとか説得して、「家族信託」だけはしてもらうことがとても重要であることが理解できたのではないでしょうか?老親が認知症になったあと、どれだけ残された時間があるかはわかりませんが、家族信託さえしておけば、委託をうけた子供が、相続対策を講じることができるようになるのです。
ちなみに、認知症対策としての家族信託では、必ず「自益信託」とするのが基本です。というのも、贈与税を回避しなければならないからです。
自益信託とは、委託者と受益者が同じということ。
受益者というのは、委託者(親)が受託者(子供など)に託した財産から生まれる利益を受け取る人のことです。
例えば、アパートの賃料などを受け取る権利は、委託者(親)が持つようにしなければなりません。
もし受託者(子)がそのまま利益を受け取る権利(受益権)も得るとすれば、そこに贈与税がかかることになってしまうからです。
あくまで家族信託では、本来、親が自分でアパートを新築して相続対策を行うべきところを、信託契約に基づき、子供が親に変わって相続対策をしているだけですね。
ですから、そこから生まれる利益は親が受け取るべきものなのです。
さて、話が長くなりますので、「家族信託のメリット・デメリット」につきましては、次回の後編をご覧ください。
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