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普通借家契約での家賃値上げがほぼ不可能な理由

公開日: 2023年06月21日

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こんにちは!YouTuber ウラケン不動産です。

今日は、普通借家契約の家賃値上げがほぼ不可能な理由についてお話しします。

僕のアパートで「家賃値上げ大作戦」を決行すると先日のブログでお話ししましたが、近々、実際に値上げの通知をする予定です。

値上げが実現できるかどうかは五分五分です。

ただ、もし今回の家賃値上げが実現できなくても、実質的な値上げはできると思っています。

というのも、僕のアパートはすべて「普通借家契約」ではなく「定期借家契約」で契約しているため、契約期間が満了すると自動的に契約が「終了」となります。

つまり、普通借家契約で行われる「更新」ではなく、「再契約」という扱いになるため、法的には仲介手数料を徴収することが可能なのです。

僕の物件では元々この仲介手数料を無料にしていたため、今回の再契約時に家賃の値上げを拒否された場合は、仲介手数料を1ヶ月分徴収することで、実質的な家賃の値上げと同等の効果を得ることができます。

定期借家契約の満了通知は、通常6ヶ月前に行うことになっていますが、ちょうど今月、1件の通知予定がありますので、

・再契約する場合には家賃が上がること
・家賃を据え置く場合には仲介手数料を支払っていただくこと


をお知らせする予定です。

結果がどうなるかは、今後報告していきたいと思います。

 

普通借家契約は、家主よりも借主の保護をする法律

このように、僕が戦略的に家賃を値上げできるのは、なんといっても定期借家契約で契約をしているからです。

定期借家契約の場合、再契約時の新賃料に納得がいかなければ、法律上、入居者は退去しなければなりません。

したがって、今回の値上げで大きなトラブルになることは少ないと思います。

しかし、実際には9割9分以上の大家さんが、普通借家契約で契約をしていると思います。

普通借家契約の場合、更新時の新賃料に納得がいかなければ、入居者は現行の家賃を支払い続けることで、引き続き居住することができてしまいます。

つまり、普通借家契約は大家さんよりも入居者が強く保護されているのですね。

大家さんが家賃を値上げしたいのであれば、新家賃が適正な価格であることを裁判で証明し、判決を得る必要があります。

その間、入居者は自分が妥当だと考える家賃、つまり現行の家賃を支払い続けることで住み続けることができてしまう・・・そういう法律になっているのです。

(もし値上げした家賃が妥当であるという判決が出た場合、当然ながら入居者は値上げが通告された時から遡って、その差額を大家さんに支払う必要があります。)

日本の家賃相場は長い間上がっていないため、普通借家契約の更新時に家賃を上げることは非常に難しいと言わざるを得ません。

「家賃が上がるなら退去する」と言われてしまえば、空室が生じて逆に損をする可能性もあるため、家賃の値上げは戦略的に行う必要があります。

普通借家契約の場合は、家賃を上げられたらむしろラッキーと考えておく必要があるでしょう。

 

実例:普通借家契約で家賃を上げることの難しさ

普通借家契約で家賃を上げることがどれだけ難しいか、一つの例を紹介させていただきます。

あるマンションオーナーが自宅を住み替える際に、それまで住んでいたマンションを貸すことにしました。

しかし、家賃相場についてあまり知識がなく、比較的安い賃料で、それも普通借家契約で契約してしまいました。

最近は物価が上がってきており、さらに相場よりも安い賃料だったため、オーナーさんは更新時に家賃の値上げを通知しました。

しかし、入居者は不動産に詳しい人のようで、家賃の値上げに納得せず、これまで通りの家賃しか支払ってこなかったのです。

この場合、既存の契約は「法定更新」となり、合意のないまま、従前の内容で、かつ期限のない契約として更新されたことになります。

これが普通借家契約の特徴であり、摩訶不思議な点です。

オーナーにしてみれば、今まで安い家賃で貸してあげたのに・・・という気持ちになるでしょう。

中には、弁護士を交えて法的に争う人もいます。

ところが、普通借家契約の場合、オーナーの立場は弱く、入居者が強く保護されているので、オーナーが退去を求める場合には、逆に立ち退き料を支払わなければならないこともあります

立ち退き料の相場は家賃6ヶ月分という判例もあり、さらに弁護士に依頼すれば、その費用が50万円100万円とかかるでしょう。

オーナーにしてみれば、まさに踏んだり蹴ったりの状況ですが、このようなことは珍しいことではありません。

「それなら、そのままの家賃で住み続けてもらったほうが得だよね」ということにもなるでしょう。

家賃の値上げもできず、立ち退きを求める場合には立ち退き料が必要になる・・・普通借家契約は、家主にとってはメリットがほとんどありません

僕が強気で家賃交渉をできるのは、定期借家契約だからであって、さすがの僕でも普通借家契約の物件で値上げ交渉をする自信はありません。

 

全然浸透しない定期借家契約

定期借家契約に関する法律ができて20年以上が経ちますが、いまだに取り扱う業者が少ないのは、知識不足や手続きが面倒だからという理由があります。

例えば、更新ではなく再契約になるため、更新事務手数料がもらえなそう・・・6ヶ月前の通告を忘れてしまいそう・・・と考えて、取り扱わない業者が多いのです。

さらに、定期借家契約は家賃を下げなければ決まらないとか、礼金をもらえなくなるといった事実ではないことを言っている場合もあります

このような知識不足や怠慢から、定期借家契約は入居者にとっても大家さんにとってもメリットが少ないと言って、取り入れようとしないバカな業者がいるのです。

定期借家契約を取り扱えないと門前払いするような業者は、関わるだけ無駄です。

未来に向かってトラブルのない賃貸経営を行いたいのであれば、大家さんにとって定期借家契約はマストな契約です。

定期借家契約についてしっかり学び、それを取り扱ってくれる信頼できる業者と付き合うようにしましょう。


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